2016/11/14

ナラティブの集積がエビデンスを超える

認知症治療研究会会誌(第3巻第1号)が届きました。 「発刊の言葉」にある。「近年、エビデンスという言葉が臨床医を支配するようになってきた。エビデンスとは集団統計上有意に効果があることが研究対象薬剤に証明され、その統計処理の正当性を審査され論文化、発表されたことを意味することが多い」

たしかにエビデンスは重要である。「○○が△△に効果がある」と言われ、「科学的に効果が証明されている」という’お墨付き’があれば安心するし、処方された薬を信用してを飲む。ことろが、そのエビデンスなる存在が、製薬会社主導の下、製薬会社の利益に資するようにねじ曲げられた偽りの産物であるとしたらどうなるか? (だから私は、出された’あの製薬会社’の降圧剤をまじめに飲んでいない)

エビデンスよりナラティブ
エビデンス信奉者、製薬会社御用達学者には見向きもされないかもしれないこの会誌、今回は「歩行障害系認知症」とサブタイトルが施されています。

実は歩行障害をコウノメソッドで提唱する治療で、歩けない人が歩けるようになると困るのではないか?と心配していました。見守りの必要性が増すからです。不用意に立たれ、無目的に歩き回り、その挙げ句、転倒して骨折する。施設介護者はこういう事故を恐れるのです。

症例報告として、「抗パーキンソン病薬の危険分散で妄想をあっかさせずに車椅子生活から歩行可能となったLPCの1例」(松野先生、千葉県)が掲載されています(p.72~73)。 

治療戦略を綿密に立てるとして、「治していく順番は大切である。先ず、覚醒させる。次に周辺症状の陽証を整理する。『介護者保護主義』の観点から陽証の治療を優先する。それから歩行障害を治療する」とされています(「」内の引用は一部改変。詳しくは本誌をご参照ください)。

こういう手順であれば、「不用意に立たれ、無目的に歩き回り、その挙げ句、転倒して骨折する」ということは杞憂となるかもしれません
さて、こういう症例報告をいくら集積したところで、「エビデンスがある」とはならないです。仮に他の学会からは評価されないであろう治療方法であっても、介護する家族や施設介護者に評価されればいいのです。

サーフィンアレンジは地域包括ケアシステムの要
「公募論文」では、「訪問診療でのサーフィンアレンジの重要性」と題して宮城先生(沖縄県)の事例が掲載されています。
これを拝読した時、ちょうどこのブログに出そうと思っていた「漠然とした思い」が「確信」となりました(左図参照)。

診療報酬と介護報酬のダブル改訂が実施される2018年、「地域包括ケアシステム」の構築に拍車がかかる変革の年とされています(日経ヘルスケア)。

「地域包括ケアシステムにおけるかかりつけ医の役割」(日本医学ジャーナリスト協会総会での特別講演を読んでいた時、コウノメソッドの採用可否がこれからの医療・介護のターニングポイントとなるのだろうと思いました。(こちらもご参照ください→)



4文字でピンと来た進行性核上性麻痺症候群(PSPS)

 「この人、レビー小体型認知症(DLB)だけでは説明がつかないよね・・・」そう思ってお世話してきた施設入所者はいつも目を閉じています。「目を開けてください」と声をかけると、目を開けるような動きを見せますが、しっかりと明けることはありません。何も知らない介護職も看護師も「傾眠」として認識しています。

入所当時は目を開けていることが多かったですし、目を閉じていても声をかけると目を開けます。四肢に鉛管様筋固宿があり、時々幻覚(幻視)があり床に落ちたと思っている物を拾おうとする行為がみられます。近隣の総合病院でDLDと診断され、ガランタミンが処方されています。
それでも、最近の様子を介護を通じてよく観察していると、「おかしい。DLBだけでは説明しきれない何かがある・・・」と、思っていました。

歩行障害系認知症特集として、「当院で経験した進行性核上性麻痺症候群(PSPS)の50例に関する臨床検討」(中坂先生、神奈川県)が掲載されています。先生の指摘するように、大脳皮質基底核変性症候群(CBS)も進行性核上性麻痺症候群(PSPS)も決して稀な病気ではないことは、介護現場に居ても分かります。

上記のDLBだけでは説明の付かない入所者には、「開眼困難(開眼機能不全)」があるのです。ここでは記載を省略しますが、あたかもパズルを解くかのように症状を拾い、つなぎ合わせて考えると、DLBではなく、PSPSであると鑑別した方がよさそうです。この「開眼困難」でピンと来ました。
この開眼困難については、「開眼失行と眼瞼痙攣はジストニアの一種」と題して、中坂先生のブログに掲載されています。(詳しくはこちら→)

甚だ僭越ではございますが・・・ 
このように、ある文章を丹念によく読んで、介護現場で施設入所者をよく観察していると、色々なことを教えて下さるものです。本当に身に付く知識というのはこういう「ピンと来た!」と思うことの積み重ねによるものです。これについては、「座談会 認知症医療と介護を学ぶ」(p.78~81)に掲載されています。 
p.79の上段の写真のオッサンがこのブログを書いています。2017年2月26日、パシフィコ横浜で、「この顔にピンと来たら」、気軽にお声をおかけください。