2014/10/27

異端の研究者 小出先生

異端の研究者
最近は小出先生(京都大学 原子炉実験所)の講演会でのお話しばかりを聴いている。べつに認知症から原子力に興味が変わったわけではない。私は元々物理屋・工学屋であるし、小出先生のお話しを聴けば聴くほど共感するのである。原子核工学の研究者でありながら原発建設を反対し続けているのであるから、原子力発電を推進するアカデミズムを多数派(正統派)とすれば、小出先生は少数派であり異端の研究者である。


学会では周辺化されるから主流派には絶対になれないだけではなく、大学では教員として出世は望めない。だから、小出先生の肩書きは約40年間ずっと助教である。助教というのは、昔で言う「助手」である。上司である教授に嫌われないように、コツコツと研究を重ね、論文を書いていたら准教授、教授へと出世していくのが一般的なコースである。

出世欲や名誉欲を満たすことを望むのであれば、原子力発電に賛成して研究をすればよい。そうすれば、京都大学は国立であるから国からの研究費は潤沢とは言わないまでも現在よりも増額されるだろうし、企業からの寄付金を得やすいのだが、そういうことには執着せずに自分が正しいと思うことを地道に続けておられる、御用学者ではない「異端の学者」なのである。小出先生は、自分の思いに真っ直ぐに忠実に生きているという。

原子力発電が黎明期の頃から、「原子力発電は危険だからやめよう」 そう訴え続けてきた中、2011年3月11日 危惧し続けてきたあの事故が現実のものとなってしまった。
「原子力はクリーンで安全であり、絶対に事故などありえない」という主張は3.11で崩れたのだが、ひとつの発電所がもたらした事故の深刻さというのは計り知れない。

そろそろ、このブログのメインテーマである認知症に話しを移そう。
小出先生のお話しを聴くと、どうしても認知症医療の根深い問題と、原子力ムラの問題が同じ事象のように思えてくるのである。原子力ムラとは下記のことである。(コトバンクより一部転記)
原子力発電を巡る利権によって結ばれた、産・官・学の特定の関係者によって構成された特殊な社会的集団及びその関係性を揶揄(やゆ)または批判を込めて呼ぶ用語。2011年の福島第一原子力発電所事故により原子力を巡る産・官・学の癒着や閉鎖性がマスコミなどによってクローズアップされた。国際原子力委員会(IAEA)からも日本の原発規制当局には十分な独立性がないと指摘された。年間数兆円とも言われる原発の利権に特定の企業・機関・個人などが群がって、独善的でレトリカルな言論で懐疑的な意見や批判的な意見を封殺するという、狷介(けんかい)で偏狭なムラ(村)社会のごとき様相を端的に表現する言葉として「原子力ムラ」の用語が急速に巷間(こうかん)に広まった。
私は学者ではないが、異端のひとりである。「認知症は治せる」と信じている異端であるが、権力も権威も社会的地位もないから別にどうということもない。ただ切実なこととして、私が現在お世話している高齢者の大半は認知症であり、手のかかる人も多数いる。
そういう方々をお世話するのが私達の仕事なのであるが、どう考えても診断が間違っているとか薬の処方が不適切であるという事例が後を絶たないということを問題視しているのである。

コウノメソッド実践医の先生方は異端なのだろうか? どうみても極めて正当なこととして患者に適切な治療をして下さっているだけにしか思えないのだが・・・


医者じゃない、社会的地位も収入も低い介護職のアンタが、そこまで認知症のことを勉強する必要はない。医者の診断や薬のことに口出しする資格はない! そういう非難の声は身近なところからも聞こえてくるのであるが、小出先生のように自分が正しいと思うことを地道に続けていきたい。

2014/10/25

認知症介護通信14/10/25

富士フイルム・・・ カメラメーカーでもあるけれど

今でこそ一般にはデジタルカメラメーカーの印象が強い富士フィルムであるが、社名のとおりフィルムメーカーでもある。
私は同社のリバーサルフィルムである「ベルビア50」を愛用していた。デジタル全盛のカメラ市場ではあるが、現在もなお写真フィルムも製造販売している。デジタルカメラの普及によりフィルムの需要が激減した現在、経営的には撤退した方が良いのかもしれないが、写真愛好家のためにフィルムの製造販売を継続するのだから立派である。

ところで、近年の富士フイルムは化粧品や医薬品の開発、製造販売にも注力しており、テレビCMでもよく見かけるようになってきた。その富士フイルムが富山化学工業と共同で認知症治療薬を開発しているというから注目したい。この開発には京都大学iPS細胞研究所も参画している。

   アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」日本にて第II相臨床試験を開始
   米国の第II相臨床試験でアルツハイマー型認知症研究機関と共同で試験を開始
認知症の患者は、現在世界中に4,400万人いると推定されており、平成42年には7,600万人に増えると予測されています。その内、アルツハイマー型認知症の患者が半分以上を占めており、今後もその傾向は続くと見込まれています。現在、アルツハイマー型認知症の治療薬として、ドネペジル塩酸塩を始めとするアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などが上市されています。しかし、これらの治療薬は、神経伝達能の増強などによる一時的な症状改善にとどまるため、新たなアルツハイマー型認知症治療薬の登場が待たれています。「T-817MA」は、富山化学工業が見出したアルツハイマー型認知症治療薬で、強力な神経細胞保護効果、神経突起伸展促進効果を有し、病態動物モデルにおいて高い治療効果を示すことが確認されています。日本では、富山化学工業が平成24年より第 I 相臨床試験を実施。同試験にて「T-817MA」の安全性および忍容性を確認したため、ドネペジル塩酸塩で治療中のアルツハイマー型認知症患者を対象とした「T-817MA」の有効性および用量反応性を検討する第II相臨床試験を5月末より開始しました。また米国においては、昨年、富士フイルムがアルツハイマー型認知症領域で豊富な臨床試験の経験を有するADCSと共同で第II相臨床試験を実施することを決定。本年6月より、日本の試験と同じ用法・用量の第II相臨床試験をスタートさせました。今後、日・米における同用法・同用量での臨床試験体制の下、「T-817MA」の開発を進めていきます。「T-817MA」は、高齢化社会の進展に伴って急速に増加しているアルツハイマー型認知症患者に対して、高い治療効果が見込める革新的な薬として期待されています。今後、富士フイルムグループは、京都大学iPS細胞研究所と実施している、患者由来iPS細胞を用いて「T-817MA」の有効性を予測するバイオマーカーの特定などを目指す共同研究も活用して、「T-817MA」の開発をさらに加速させていきます。



現在、認知症の中核症状をターゲットとする治療薬は下記の通りである。介護に携わる者の殆どは薬のことに関心を持っていないと思われるが、これらの名前くらいは知っておきたい。何故なら、これらの薬が、適切ではないか、場合によっては副作用により介護負担を不当に増していることがあるからである。
 ・アリセプト、ドネペジル(ジェネリック品)
 ・レミニール
 ・メマリー
 ・リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ (貼り薬)

ピック病の人にアリセプトを投与して在宅生活が困難となり、ショートステイでの生活を続けているケース。アルツハイマー型認知症の人にアリセプトを過剰に投与して元気が出すぎ、見守りが常時必要となってしまったケース。こういったケースは認知症の症状と服用している薬の因果関係をしっかりと見ていれば見抜けることである。

下図はコウノメソッド2014年版に掲載されているアルツハイマー型認知症の誤診と副作用の関係である。例えば、[アリセプト副作用]→[Yes]→[逆上]のケースは先に挙げた在宅生活が困難となった「誤診コース」である。
この人の場合、アリセプトが効かないのだから投与を中止しなければならないのであるが、そのことに医師は気付いていない。更には、アルツハイマー型認知症ではなく、ピック病であることに気付いていないことも問題である。

アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の登場に期待したいところではあるが、それ以前のこととして、先ずは認知症を正しく診断できる医師がどの医療機関にも居ることに期待したい。

アリセプト(ドネペジル)、レミニール、メマリー、リバスタッチパッチ、イクセロンパッチには、規定された用量まで増量しなければならないという決まりがある。そのため、本来は有効な良い薬なのであろうが、患者本人のみならず介護者にとっても好ましくない周辺症状を増悪させている。

認知症治療薬「T-817MA」には増量規定のない、「効果が現れた用量で維持する」という普通の規定の優れた治療効果を有する薬であって欲しいと期待している。私は、写真愛好家のためにフィルムの製造販売を継続する富士フイルムのファンである。だから、利益至上主義ではなく、良心的な医薬品の製造販売ができる会社であって欲しい。

レビー小体型認知症の意識消失発作

レビー小体型認知症(DLB)は、活気がなくて、いつも眠っているのだか覚醒しているのだか分からないような状態でいることが多い。症状の中期から末期だからか、年齢からみて老衰だからなのかよく分からない。こうなると、通常は介護上の手がかからないから、ほとんど注意の目が届かない。
それでも、職員がヒヤリとして心配になる時がある。以下の引用で示すような、DLBの意識消失発作が発生した時である。
(ドクターコウノの認知症ブログ レビー小体型認知症の勉強  DLBの意識消失発作 より転記引用)
DLBは、ある時期頻回に意識消失をおこすことがあります。食事のあとにTVを30分以上座位で観ているときにおこすことが多いです。首を後ろにうなだれ体をゆすっても起きません。必ずしも血圧が低下しているわけではなく、デイサービススタッフはあわてて救急車を呼びます。搬送先の病院では、頭部MRI、脳波、24時間心電図を行いますが何も異常は見つかりません。循環器内科医は、DLBが意識消失発作をおこすことを知らないことが多いので一通りの検査をします。初回はこのようなことがあっても仕方がないですが、DLBとわかっていて何度も救急車を呼ぶことは不要です。呼吸をしていて、脈があれば静かにしておけば5-30分で目を覚ますことが多いですが、かなり長い間目を覚まさない場合もあります。
Eさんは軽微な血管性認知症(VaD)とDLBの混合型である。食事はかろうじて自力摂取できるレベルではあるが、ほぼ全介助の状態である。食事中や食後に意識消失発作を起こして職員を慌てさせることがある。そういう場合は手順通りにバイタルチェックをするのだが、正常である。
Eさんの意識消失発作には次第に慣れてきた。私も慣れてきたのだが、これをDLBの症状としての意識消失発作であると思っている職員は看護師も含めていないであろう。始末に悪いのは、Eさんをアルツハイマー型認知症(ATD)と誤診している開業医である。

NさんもDLBである。寝たきりであり、眠っているのだか、意識消失の状態にあるのだかよく分からない時もある。食事と入浴の時に離床するが、当然車椅子を利用する。転倒のリスクがないことだけが救いである。ただ、食事にはやたらと時間がかかるのである。口を開けない、咀嚼しない、嚥下しないのであるからだ。
食べないのに無理矢理に口に食べ物を入れるのは危険であるし、虐待に近い行為でもある。そこで私は、ジャパンコマスケールを利用して意識レベルを確認して、グレードⅢであれば食事介助を行わないことにした。
ジャパンコマスケール
Nさんは寝たきりであるからとても静かである。Nさんは目を閉じ何も言わないのだが、週に1度は息子さんかそのお嫁さんのどちらかが、あるいは夫婦揃って面会に来てくださる。せめて、ニコリン点滴で意識レベルを引き上げたいのだが、実現されることはない。

もし、Nさんが私の親であれば、ニコリン点滴+アリセプト1.67mg(家庭天秤法で調整)+フェルガード100Mという選択肢を選ぶ。死亡診断書に「認知症」が死亡理由というのはないであろうが、認知症のままでの天寿まっとうという選択肢はないだろう。

2014/10/18

認知症介護通信14/10/18

神経原線維変化型老年(期)認知症

気になる認知症。それは、神経原線維変化型老年(期)認知症(senile dementia of the neurofibrillary tangle type;SD-NFT)のこと。いつもは、各タイプの認知症で未治療であったり、治療が不適切なため周辺症状が酷いケースばかりを観ているのだが、AGDと並んでSD-NFTも気になる認知症である。

日頃、手のかかる認知症高齢者のお世話ばかりやっていて疲弊する中、「MCI(軽度認知障害)かな・・・?」と思いつつも一部介助のみで、ほとんど手のかからない超高齢者のお世話をさせていただくのは実に楽しくて働き甲斐を感じるものである。
転倒に気を付けて見守ってあげれば一部介助で普通に暮らせるのであるから、会話を楽しんだり、時々見せる滑稽な所作を微笑ましく感じるのである。現在のところ、生前の確定診断ができる段階ではないようだが、90歳以上でほとんど手がかからず普通に暮らしている高齢者を、SD-NFTかAGDと思っていてよいのだろうと理解している。

(以下、青色表記は、アピタル 「進行がとてもゆっくりなケース」 より転記引用)    
 アルツハイマー病(AD)の経過は、「緩やかな発症と持続的な認知障害の進行」により特徴づけられており、進行が確認されない場合にはアルツハイマー病という診断そのものが疑わしいことになります。
 進行が非常にゆっくりである場合には、神経原線維変化型老年(期)認知症(senile dementia of the neurofibrillary tangle type;SD-NFT)なども念頭に置く必要があります。
 ちょっと難解な用語が並びますが、アルツハイマー病の根本的な治療を理解するためにはどうしても必要な知識になりますのでお付き合い下さいね。
 SD-NFTは、神経原線維変化型認知症の一つの亜型です。神経原線維変化型認知症は、神経原線維変化が病変の主座を占める認知症の総称です。 SD-NFTは、辺縁系神経原線維変化認知症(limbic neurofibrillary tangle dementia;LNTD)とも呼ばれています。主に後期高齢者に物忘れで発症し、軽度認知障害を経て認知症に至りますが進行がゆっくりで、認知機能障害も比較的軽く、人格レベルも割合保たれるという特徴があります。CT所見では、海馬領域の限局性萎縮が特徴的です。病理所見では、海馬領域に限局した無数の神経原線維変化が見られ、老人斑がほとんどないことでADと区別されます。
 SD-NFTは、すべてのMCIがADに至るわけではないということに関する理解を深めるうえで重要な疾患概念となります。
 ADでは、アミロイドβというタンパク質が脳内に過剰に蓄積することが引き金となって神経細胞死が起き、認知症を発症すると考えられております。PET検査を実施すれば、そのアミロイドβを検出することが可能ですので、アルツハイマー病の超早期診断(発症前も含めて)および鑑別診断という観点からPET診断の重要性が指摘されています。
 SD-NFT、嗜銀顆粒性認知症(argyrophilic grain dementia;AGD)といった疾患は、ADと症状が似かよっており、ADと誤診されているケースが多いのが現状です。症状は非常によく似ていてもADとは発症機序が異なり、アミロイドβは関与しておりません。
 したがって、現在、臨床試験が実施されておりその登場が待ち望まれているアミロイドβをターゲットにした根本的な治療薬は、SD-NFT、AGDといった疾患では効果が期待できないことになります。ですから、新薬の有効性を正しく評価するためにも、より正確な診断が求められる時代に入ってきているのです
たぶん、90歳を超えて、「親が少し呆けてきたから、治療を受けさせる」とは誰も望まないであろう。私なら治療を望まないが、フェルガード100Mを飲ませて在宅介護を続け、あとは「平穏死」で天寿をまっとうするということで納得するのだが、如何であろうか?

以下のことに留意しながら、その人らしく残された人生を過ごさせてあげたい。(BPSD─症例から学ぶ治療戦略 フジメディカル出版より)


薬物療法を必要としない方々ほど、介護家族あるいは施設介護職の人が主軸となって活躍する機会は多い。特に転倒に気を付けることは言うまでもないが、言葉かけを強力な武器として上に掲げたことを継続すればよい。ついでながら、介護に携わる者の本質的な技量は「こころ配り」や「言葉かけ」であって、食事介助や排泄介助の技能だけにあるのではない。

健常者と認知症の人の中間の段階(グレーゾーン)にあたる症状に、MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)がある。認知機能(記憶、決定、理由づけ、実行など)のうち1つの機能に問題が生じてはいるが、日常生活には支障がない状態のこと。


認知症サミット日本後継イベントの開催 

昨年開催されたG8認知症サミットのあとを受け、厚生労働省などの主催で認知症関連のイベントが開催されるという。(以下、青色表記は厚生労働省ホームページより転記引用)  
世界的な課題である認知症に各国が協力して取り組むため、昨年12月ロンドンで「G8認知症サミット」が開催されました。今年度は、これを受け、4つのテーマについて後継イベントが開催されることとなり、日本においても、その一つの後継イベントを、下記により開催します。
1 趣旨:各国の協力により認知症への取組が推進されようとしているなか、下記のテーマに関して、関係者が集い、知見や経験を共有する。併せて、世界でまれに見る速さで高齢化が進んでいる日本の取組等について、本イベントを通じて世界に発信し、認知症分野での国際貢献を目指すとともに、これを契機をした国内施策の更なる充実・発展を目指す。
2 主催:厚生労働省、独立行政法人 国立長寿医療研究センター、社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター (後援:OECD、独立行政法人 国立政策研究大学院大学、特定非営利活動法人 日本医療政策機構、認知症サミット日本後継イベント専門分科会実行委員会)
3 日時:平成26年11月5日(水)~7日(金)
もはや、「認知症を語る会」であっては現実的には何ら意味をなさないのである。予防は当然のことながら必須項目であるが、現に発症している人たちを今日現在の治療技術で救う方策を国家戦略として国内外に示すことが必要なのである。虚しく語る会に終わらないことを期待したい。

無理かなぁ~?! ・・・・・って、実はあまり期待してはいない。抗認知症薬メーカーが協賛していなくて、医者は認知症を「治せる」」(廣済堂出版)を来場者が皆で輪読して、取材に来たマスコミ・報道関係機関が国際公用語でこの本を翻訳して全世界に紹介するなら期待できる。 ・・・・・などと妄想する。

我が国の医療費は2012年で約38兆円、2025年には50兆円を超えると厚生労働省は推計している。高騰する医療費は結局のところ国力を弱体化させるだけである。介護保険とて同様である。認知症医療・介護は一家庭や一施設の切実な課題ではあるが、国全体でみると社会問題であると同時に深刻な経済問題でもある。有効な戦略と戦術を打ち出して、何とかして欲しいと思う。


コウノメソッド勉強会

このブログでリンクさせていただいている「鹿児島認知症ブログ」の著者である平山先生が講師をされた勉強会(8月11日)が、YouTubeに公開されている。
残念ながら勉強会最初のオープニングがなくて途中からの録画であるが、認知症の症状とその治療方法がビデオ映像と共に説明されている。施設、あるいは家庭で認知症の人をみている方々には有益なことが、鹿児島訛りの先生のソフトで優しい声で学べるのでご覧いただきたい。


この勉強会で説明されていることは、介護に携わる方々が是非とも知っておきたいことばかりである。紹介されている症状は特異的なことではなく、ごく普通に見受けられることなのは介護現場に居て認知症をよく観ている方々にはお分かりいただけるであろう。

困った周辺症状さえも「あるがままに受け入れる」、「こういう困った人のお世話をするのが私達介護に携わる人の役割」などと頑なに思い込んでしまってはいけないのである。適切な治療を受けることで、認知症の患者/利用者は穏やかな生活を取り戻せる。そのことで、介護は楽になるということも理解していただきたい。
医者は認知症を「治せる」のではあるが、その可能性を大きく支えるのは、患者家族あるいは施設介護者である。「医師ではない者が薬のことに口出ししてはいけない」、「認知症は治らない」という既成概念はもう捨てよう。

パーソンセンタードケア、タクティール、ユマニチュード、音楽療法、回想法。どれも否定するものではないけれど、その前に(あるいは並行して)適切な薬物療法が効果的・効率的であり、生産的である。
「何を生産するの?」って。時間的ゆとりと精神的ゆとりである。これらのゆとりを手厚い介護にまわしましょう。

ゆとりがないから、介護現場はいつも神経ピリピリでギクシャクとした雰囲気となる。これが、患者/利用者に伝わり介護現場は荒れる。更には、職員/スタッフ同士の人間関係のもつれの遠因ともなり、離職者が後を絶たないとも思われる。そういうで負(ネガティブ)の連鎖を形成してはいないか? 今一度問い直しておきたい。


参考リンク
 ・レビースコア
 ・ピックスコア
 ・コウノメソッドマニュアル

2014/10/11

認知症介護通信14/10/11

おはよう

私は、適切な認知症の治療なき介護は虚しい仕事だと思っている。だから、単なる「認知症を語る」というスタンスでこのブログを書いてはいないつもりである。けれど、適切な治療ナシではあるが、嬉しいことがあったから紹介したい。

前回書いたIさん(前回の記事「挨拶してくれた」)は、うんともすんとも言わないのだが、ユマニチュードを少しばかり意識して声かけを続けてきた。ある日の朝いつものように、「Iさん、おはようございます」と、私はIさんに顔を近づけて挨拶した。すると、はっきりした声で「おはよう」と返事をして下さった。また、顔を近づけてオーバーに笑顔で笑って見せると、笑って下さった。
Iさんの入所以来、初めて声を聞くことができた。虚しい介護を続けてきただけに、とても嬉しかった。その後も、「こばは(こんばんは)」と挨拶を返して下さったことがある。但し、いつでも、こういうことがあるのではないことは付け加えておきたい。

Iさんには、娘さん夫婦が週に1回は面会に来て食事介助をして下さる。だから、Iさんが娘さん夫婦に何か言葉を発する時が来るように期待したい。本当は、90歳を過ぎても、「認知症治療は捨てたもんじゃない!」と思っているのだが、現実的には治療してもらえないから仕方ない。

サプリメントに思う

「医者は認知症を「治せる」」に、健康食品/サプリメントが登場する。
米ぬか健康食品・サプリメント=フェルラ酸=フェルガード(グロービア社製品) と認識すればよい。
「薬」か「サプリメント」かの違いは、単に分類上のことである。薬と同等、あるいは薬以上の効果が確認されているのであるから、活用しない手はないと思う。

私は元々技術屋である。アタマの中は物理屋である。だから、裏付けとなるデータ、根拠となるデータを重要視する。「これだけのデータがあるのだから信頼に足りる」ということで納得できれば真実であるとして受け入れるタイプの人なのである。物理現象の場合、実験データを集めて現象を確認できれば、それが「真」であるとして理解・納得できればそれで良いのである。

一方、医学の場合は事情が異なるようで、比較対象群と比較して「統計的有意」ということが実験データで示されない限り「科学的」とは認められないという。学問的・歴史的な背景があるからなのかどうかは知らないけれど、実利的側面から見ると少しばかり「足かせ」が重すぎるようにも感じる。

健康補助食品・サプリメントには、効能の疑わしい製品も多く市場に出回っている事情もあってネガティブな先入観がつきまとうことは否めない。だからであろうか、コウノメソッドではサプリメントを治療に使うことから、治療方法が訝しがられることもあるようである。とても残念に思えてならない。

もし、「医者は認知症を「治せる」」を読んで、サプリメントに疑義を抱いたならば、フェルガード(グロービア社)をよく読んでみるとよい。薬事法など関係法令の制約もあるのだろうが、認知症の治療の一助にサプリメントの有用性を実に控えめに紹介している。

ここでは、フェルガード(フェルラ酸、ガーデンアンゼリカ)の効果を検証した論文が紹介されている。これらのいくつかは検索エンジンで検索すれば閲覧することも可能であるからご覧いただきたい。(私も実際によく読んだ。) 以下青色表記の箇所は、同社ホームページからの転記である。
■フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物の発達障害者に対する効果
    愛知児童青年精神医学会 第5回学術総会 2014.3.16
■フェルラ酸による2型糖尿病患者における糖尿病性神経障害とQOLの改善
    第56回日本糖尿病学会年次集会. 2013.05
■認知症の人への医療・ケア ~臨床現場からの問題提起~ 
   2013.2日本慢性期医療協会誌 85号 2013.02
認知症に対するフェルガードの臨床効果 
   第31回日本神経治療学会総会. 2013.11
■軽度認知症害から認知症への進行を抑える~フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物への期待~
    第54回日本未病システム学会学術総会 .2013.11
フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物の発達障害者発達障害者に対する効果に対する効果
    第54回日本児童青年精神医学会総会 2013.10.10
Ferulic Acid Is a Nutraceutical b-Secretase Modulator That ImprovesBehavioral Impairment and Alzheimer-like Pathology in Transgenic Mice
    PLOS ONE 2013; Vol.8, Issue 2.
L-NAME投与マウス血液の抗酸化力・酸化ストレスの変化-フェルラ酸の影響- 
   第132回日本薬学会年会.2012.03
EFFECT OF FERULIC ACID AND ANGELICA ARCHANGELICA EXTRACT ON BEHAVIORAL AND PSYCHOLOGICAL SYMPTOMS OF DEMENTIA (BPSD) OF ALZHEIMER DISEASE (AD) AND DEMENTIA WITH LEWY BODY DISEASES (DLB)  
  27th International Conference of Alzheimer's Disease International London 2012
水溶性フェルラ酸エステルの酵素合成およびアルツハイマー病改善効果に関する研究
    日本農芸化学会関西支部 第470回講演会 2011.07
アルツハイマー型認知症(DAT)の周辺症状おけるフェルラ酸、ガーデンアンゼリカ化合健康食品「フェルガードR」の有効性の検証 
   第11回日本抗加齢医学会総会 2011.05
Effect of ferulic acid and Angelica archangelica extract on behavioral and psychological symptoms of dementia in frontotemporal lobar degeneration and dementia with Lewy bodies   
 Geriatr Gerontol Int 2011;11:309-314
■The phenolic compound ferulic acid ameliorates cognitive impairment and amyloidosis in Alzheimer mice 
   society for Neuroscience.2011
■アルツハイマー型認知症(DAT)の周辺症状おけるフェルラ酸、ガーデンアンゼリカ化合健康食品「フェルガードR」の有効性の検証 
   日本認知学会誌Dementia Japan vol24 No.3 2010.09
フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物のBPSDに対する効果~前頭側頭型認知症とレビー小体型認知症~
 老年精神医学会.2010.6
認知症周辺症状に対するフェルラ酸の使用経験
    京都医学会雑誌2010.第57巻第1号別刷

第三者が効能を検証して上記のように発表しているのであるから、「信頼性に足りる」として理解して良いのではないだろうか。

抑肝散加陳皮半夏、その後

更年期の私のことである。癇癪を起こして怒る程ではないが、夕方から夜になるとイライラするのであったが、抑肝散加陳皮半夏を服用して約2ヶ月になる。少しばかり憂鬱な気分も晴れてとても調子が良い。
朝の起床時に1包、午後3時頃に1包の服用である。状態に応じて夜に1包を飲んだり、飲まなかったりする。副作用は、便が軟らかくなったことくらいである。
健康補助食品・サプリメント程ではないにせよ、漢方薬にもネガティブな先入観は存在するようではあるが、「漢方、いいね」 本当に良いと実感する。



日本人ノーベル物理学賞受賞
認知症とは何の関係もないけれど、ノーベル物理学賞を3人の日本人が受賞することになった。喜ばしいニュースであるが、生活の身近にある技術の開発者達が受賞の対象となったことが格別に嬉しい。(以下、朝日新聞Digitalより引用)

スウェーデン王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル物理学賞を、赤崎勇・名城大教授(85)と天野浩・名古屋大教授(54)、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の日本人3人に贈ると発表した。赤崎さんと天野さんは青色の発光ダイオード(LED)を初めて作り、中村さんが青色LEDの製品化に成功した。

LEDは電気エネルギーを光に変える半導体素子だ。フィラメントを電気で熱したときに出る光を使った白熱電球と違い、電気を直接光に変えるので効率が良く、熱による材料の劣化も少なくて寿命が長い。光の3原色をLEDで実現すれば幅広い色を再現できて用途が広がるが、青色LEDはなかなか作れず、実用化が競われていた。
青色の光を出せる材料はセレン化亜鉛か窒化ガリウムに絞られていた。窒化ガリウムはきれいな結晶をどうしても作れず、多くの研究者が撤退する中で、赤崎さんと天野さんは窒化ガリウムにこだわり続けた。試行錯誤の末、名古屋大教授時代の1985年、高輝度のLEDに欠かせない良質な結晶を作製。89年、窒化ガリウムの半導体で青色に光るLEDを作ることに成功した。
3原色がそろったことで、白熱電球や蛍光灯に代わるLED照明が実用化。室内照明や携帯電話、交差点の信号機のほか、省電力・長寿命の大型フルカラー・ディスプレーなどに使われるなど、爆発的に普及した。また、青色LEDを発展させた青色半導体レーザーも実用化され、ブルーレイディスクの読み取りや記録に使われている。
「無理だ」と誰もが思っていた、即ちそれまでの常識に囚われず試行錯誤の研究をくり返し、「無理」を「可能」に変えた。なお、赤崎さんについては、認知症介護通信 14/06/28 でも書かせていただいた。常識とか既成概念に染まることなく、限界を自ら決めつけることなく、これで良いと思うことを地道にやっていきたいものである。

2014/10/04

認知症介護通信14/10/04

大声で唸る意味性認知症の人

Nさん(女性)はショートステイの利用者である。およそ2週間に1回、数日間の施設滞在である。Nさんが到着するとすぐに分かる。「ホォー!ホォー!」と1日中、まるでフクロウのように大きな唸り声をあげているからである。はっきり言って、うるさくて仕方ない。

Nさんにはアリセプト3mgが処方されているのだが、このアリセプトによって大きな唸り声をあげるという奇異反応を生じていると思われる。Nさんは、意味性認知症(SD、前頭側頭葉変性症のひとつ)なのである。話せない、話しかけても理解していない、介護拒否がある、怒り出す、食事の異常行動(箸をうまく使えない、お膳をごちゃごちゃにする)といった症状があるからである。

1年間くらいであろうか、私は、NさんのSDとアリセプトのことは知っていて様子を観てきた。最近、Nさんの薬を処方している医療機関が変わったを知った。以前は開業医からの処方であったが、現在は地元に古くからある総合病院である。糖尿病があるためその治療を受けているのは分かるが、認知症に関しては未治療に等しい。否、悪化させているだけである。総合病院であるからといって、認知症治療ができるなどとはまったく期待していないが、とても残念なことである。

Nさんは、無目的に立ち上がることも、歩き回ることも、易怒・暴力もないから、大声で唸ること以外は在宅介護で苦労することは少ないであろう。適切な治療(アリセプトは中止してリバスタッチかレミニールに代える、フェルガードを併用する)を受ければ、家庭介護で暮らしていけるだけの能力は残っているだけに、これから先が気がかりである。

LPCのTさん、怒る

Tさんはレビー小体型認知症(DLB)であるが、これに軽いながらもピック病が複合したLPC(Lewy-Pick Complex)である。Tさんは、通常はLモードなのだが、時々Pモードになる。この「Lモード」とか「Pモード」というのは一般に通じる用語ではなく、私が名付けた言葉である。
  ・Lモード
   レビー小体型認知症の特徴である幻覚・妄想の状態にあり、目がうつろでぼんやりしている。
  ・Pモード
   易怒性があり、暴力をふるったり、食事の時に異常行動が出る。

Pモードのスイッチが入らないように、私は絶対に性急な声かけや介助をしないように気を付けている。例えば、昼寝のあとに離床介助する際に、「起きましょう!」などといきなり声をかけて離床させるようなことはしない。「Tさん、お昼寝の時間は終わりましたよ。休めましたか?」などと言って様子を観つつ、じわりじわりと離床に誘導するのである。
「休めましたか?! 体が休まる訳ないでしょ! 年寄りなんだから!」などと口答えして怒られることもあるが、暴力までには到らない。

ところが最近、「2回も引っかかれた」という話しを新米の職員から聞いた。普段、何の刺激もない状態では暴言・暴力などない、おとなしいタイプのTさんである。Pモードのスイッチが入る要因のひとつは、接し方にもあるのだと感じた。性急で、何かの目的を果たすがためだけの声かけは、Pモードを誘発させる一因であろう。

挨拶してくれた

Iさんは寝たきりのピック病である。数ヶ月前までは食事だけは自分でできていたが、今は全介助の状態となってしまった。無言症もあり、どんなに声かけしても発語はない。年齢が93歳なので末期でもあり、何も言わないのも無理はないと思っていた。但し、声をかけるとしっかりと視線を向けることができる。

私はきちんと声かけするし、挨拶もする。ある日の午前中、水分補給の時間にいつものように「おはようございます」と挨拶したら、Iさんは小声で不完全ながらも「おはよう」と言って下さったのである。私は、意外な行動に驚くと共に、少し嬉しくなった。

このIさんの場合、90歳を超えていて、易怒も暴言も暴力もないから、FG療法(フェルガード+グルタチオン点滴)だけでもできれば良いのにと、勝手に思ってきた。現在のところ、これは実施不可能であるから、非薬物療法に頼る以外にどうすることもできないのである。それで、ユマニチュードに則して声かけを続けてきたのである。

ユマニチュードについて 「認知症の窓」より転記
ユマニチュードは、見る、話しかける、触れる、立つという4つの方法が柱となっていて、全部で約150もの技術があります。
見る
認知症の人の正面で、目の高さを同じにして、近い距離から長い時間見つめます。斜めや横から視線を注ぐのではなくまっすぐに見つめ合うことで、<お互いの存在を確認することができます。
目の高さを同じにすることで、見下ろされているような威圧感を与えず、対等な関係であることを感じてもらいます。近くから見つめると、視野が狭くなりがちな認知症の人を驚かすことなく接することができます。

話しかける
優しく、前向きな言葉を使って、繰り返し話しかけます。介助をするために体に触れる場合も、いきなり触れるのではなく、触る部分を先に言葉で伝えて安心感を与えてあげます。
例えば、洗髪を行う場合に「とてもきれいな髪ですね。これから、髪に温かいお湯をかけますね。気持ちがいいですよ」などと話しかけます。しかも、できる限り目と目を合わせながら行うようにするといいようです。

触れる
認知症の人の体に触れて、スキンシップをはかります。決して腕を上からつかむような感じではなく、やさしく背中をさすったり、歩くときにそっと手を添えてあげる等、認知症の人が安心できるように工夫します。

立つ
寝たきりにならないよう、認知症の人が自力で立つことを大切にします。歯磨きや体を拭くような時でも、座ったままではなくできるだけ立ってもらいます。立つことで筋力の低下を少しでも防ぐことができますし、座ったり寝たりしている時よりも視界が広くなって、頭に入る情報量を増やすことができます。

「ユマニチュード」などと意識して構えてやっている訳ではないが、私は「見る」、「話しかける」、「触れる」という行為は日々の介護で常に普通のこととして実行している。アルツハイマー型認知症か、レビー小体型認知症か、ピック病(前頭側頭型認知症)か、それぞれの認知症のタイプ・症状に合わせて話しの内容・方法を使い分けているのである。そうは言っても、「認知症には薬物療法」という気持ちに変わりはない。

「いつも怒っているのに、話しかけたら、機嫌良く返事してくれた」ということがあっても、私は何の違和感をおぼえることもないし、ユマニチュードを否定することもない。普通のこととしてみている。ただし、あまり効率的ではないし、どこかしら刹那的であるとも感じる。

時間の制約や心理的なゆとりのなさ、更には左記のような状態にあってもユマニチュードをきちんとやっていたら、周囲の者から「そういうことする時間はない! さっさと業務を片づけろ!」と指摘されるのは火を見るより明らかである。
他人様のお世話をしているのであって、モノを扱っているのではないから、「効率」という言葉は使いたくないのだが、薬で治せる、あるいは緩和できる困った症状は薬で抑える方が効率がよい。その上でユマニチュードを活用する方が効果的であると思う。