2015/01/31

認知症介護通信15/01/31

コウノメソッド実践医に期待

毎回の更新を楽しみにしているコウノメソッド実践医のブログ「鹿児島認知症ブログ」が100,000回のアクセスを超えました。そして運良く、100,000のキリ番を得ることができました(2015/01/27)。なんだかとても嬉しい。
「脳神経外科」というと、専ら頭部外傷や疾患の治療、手術を専門とする診療科目というくらいの認識しかないです。「神の手を持つ脳神経外科医・ドクター福島」は、マスコミで盛んにとりあげられてきたので馴染み深いのですが、今や脳神経外科医も認知症診療をする時代になりました。益々のご活躍に期待しています。
というよりはむしろ、「認知症=精神科=認知症専門医」とか「認知症=神経内科=認知症専門医」という一般的な暗黙の内の認識(誤解)は時として医療過誤に巻き込まれるリスクがあると思うようになったので、脳神経外科医の認知症医療への参入は心強いです。
なにしろ、手術が成功しなければ訴訟にもなりかねない、「結果がすべて、成功して当たり前」の厳しい世界で生きてこられた医師たちなのですから。
3月1日に東京で開催される第1回認知症治療研究会には、鹿児島認知症ブログ」の平山先生も参加されると聞いており、会場でお会いするのが楽しみです。 


先日、職場の同僚から質問を受けました。
A氏:「認知症の検査にはどういうのがあるの? 長谷川式とかCTとか・・・」
私 :「検査なら他に、PETやMIBGがあるけど、どうしたの?」
A氏:「実は、知り合いのお母さんの様子がおかしくて、認知症の外来に行ったの。
   だけど、CTやレントゲンで診てどこにも異常なしと言われたの。」

A氏の話を聞くと、お母さんが認知症のようでとにかく家族は大変だという。それで医療機関の外来に行ったのですが診察室ではおとなしくて普通にしていたけど、夜は特におかしいというのです。

私 :「CT画像では認知症を診断できないこともあるよ。レビー小体型認知症ならば、
  脳萎縮が画像で鑑別できないこともあるし、アルツハイマー型認知症でも海馬萎縮
  が目立たないこともある。画像はあくまでも補助的な検査なんです。」
A氏:「認知症とアルツハイマー型認知症はどう違うの? レビー小体型認知症は?」

夜勤明けのA氏と遅番出勤の私は、時間のない中でこういうやりとりが続いたのです。A氏は認知症のことがよく分かっていないようです。「認知症」というのはいわば総称であり、大きくは「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」、「血管性認知症」と分類されるのです。そして、これらは各々が個別にクリアカットされるとは限らず、合併することもあるのです。

その家族は2軒の医療機関を受診したのですが、共に異常はないと言われたそうです。認知症の初期は、特に家族が異常に気付きやすく、外来の診察室で医師は見逃すこともあるのです。

昨年、レビー小体型認知症にアリセプトの処方が認可されたこともあり、レビー小体型認知症を診断できずに「認知症=アルツハイマー型認知症=アリセプト」などという軽々な診断と処方には注意が必要な時代となりました。レビー小体型認知症と診断できずにアリセプトを規定通りに処方されては困るのです。

認知症診療は当たりはずれが大きいから、ちゃんと治せる医者を選ばないと大変なことになりますよ」とA氏に言って、最寄りのコウノメソッド実践医であるK医院の所在地と電話番号を伝えておきました。(コウノメソッド実践医の検索はこちらから)


コウノメソッドで理解する認知症[6]

認知症患者に処方される薬は、興奮系薬剤抑制系薬剤に大別される。
興奮系薬剤とは、陰証の認知症に対して用いる脳代謝改善薬の総称。使用法を誤ると介護しにくくなる薬剤群でもある。

一方、抑制系薬剤は、精神科で処方されるほとんどの向精神薬の総称。陽証の認知症に用いて介護を楽にするのが目的。用量が多すぎると過鎮静(意識障害、傾眠など)になって患者の活力を奪うため、家庭天秤法によって調整することが重要。

コウノメソッドでは、「まずは介護者に寄り添いながら、誰もが楽になる薬物療法を確立することが急務」だとする。それは、「介護者保護主義」という言葉にも表れている。生化学や薬理学、病理学から得られた知見や発想を、患者や介護者の存在を無視してそのまま押しつけたものではなく、介護現場を意識した処方体系にある。

 ・認知症の陽性症状には、抑制系薬剤
 ・認知症の陰性症状には、興奮傾薬剤
を、副作用を生じさせない量で処方する。その処方量は必ずしも医師が決められるものではなく、介護者が認知症患者(家族)の日常の様子を見ながら適宜調整する(家庭天秤療法)。

抑制系薬剤
 ウィンタミン(クロルプロマジン)
 セロクエル(クエチアピン)
 グラマリール(チアプリド)
 抑肝散
 ルーラン(ペロスピロン)
 セルシン(ジアゼパム)
 セレネース(ハロペリロール)

興奮系薬剤
 サアミオン(ニセルゴリン)
 シンメトリル(アマンタジン塩酸塩)
 アリセプト(ドネペジル)


【参考資料】
 ・コウノメソッドでみる認知症診療 (日本医事新報社、2012年)
 ・コウノメソッドでみる認知症診療Q&A (日本医事新報社、2014年)

2015/01/24

認知症介護通信15/01/24

ばあちゃん、介護施設を間違えなくてもボケるで!

無関心と無知は介護負担を憎悪させ、介護保険制度を破綻させる元凶かもしれない。
少しばかり過激なタイトルだが、これは「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」(ブックマン社)の模倣である。自分達の生活や仕事が忙しくて施設に行くことがままならないのだろうけれど、「自分の親でしょ。もっと頻繁に会いに行こう!」ということを言いたいのである。

介護施設に親を入れたら、あとはほったらかしで施設任せという家族が実に多い。親身になってお世話する者としては実に嘆かわしい。特養では、「積極的治療を望まない」という家族もいるが、それは無責任であり、保護放棄である。ある意味、他人に介護を任せて自分は、「知らぬ存ぜぬ」を決め込んでいるようなものである。介護保険の無駄遣いであり、迷惑の押しつけである。

「家族が治療を望まないから」という理由で適切な対処をせず、介護負担が増すばかりの厳しい現実がある。「施設を間違えたら・・・」以前の問題であり、家族の問題でもある。その数があまりにも多いものだから社会問題になっているというとらえ方もできる。

どこの施設でも似たり寄ったりであろうし、気付けるかどうかの違いであろうが、以下は身近にみることのできる実例のごく一部である。

1年以上前、慢性硬膜下血腫による前頭葉の機能不全でピック症状の進行(悪化)を指摘したことがあるが、黙殺された。「家族が会いに来ないから」というのが理由である。その結果、現在は食事を含めて全介助が必要となり介護負担が一段と増している。表現が露骨で当人には申し訳ないが、食事の様子は家畜同然である。(面会頻度:数年に1回)

レビーピックコンプレックス(LPC、レビー小体型認知症とピック症状の複合)を指摘したが、レビー小体型認知症(DLB)さえも認識されず、無視されている。幻覚、妄想に加え、介護抵抗が増えてきたため介護負担が増している。(面会頻度:年に数回)

DLBの初期(おそらく医師でもDLBであると診断できないかもしれない)を再三にわたって指摘したが、無視されている。食事介助中のムセが頻繁で、このままだと誤嚥性肺炎は時間の問題である。やはり、介護負担が日ごとに増している。(面会頻度:月に1回)

こんな身近な事例を挙げたらキリがない(このブログのあちこちで書いておりますけど)。だから、施設に親を預けている子どもよ、親に会いに行きましょう。そして、治せる認知症治療をあきらめずに求めましょう。施設職員だけでは、家族にほったらかしにされた高齢者の面倒のすべてを看きれないのである(治療に同意を得て、治療費を出してもらわないとどうにもならないから)。


こんな記事を見つけた。はあぁ~! と、虚しいだけの文言にため息。
「人はパンのみに生きるにあらず」 資質向上のために研修を、と言いたいところではあるが、私は研修を受けたことがない。独学とOJT(On the Job Training)だけである

2015/01/21

講演会開催のお知らせ

認知症の最高レベルの治療法についてのわかりやすいお話し

「医者は認知症を治せる」の著者である河野和彦先生(名古屋フォレストクリニック院長)のお話しが聞けることが告知されました。
詳しくは、認知症を学ぶ会HPをご覧ください。

「認知症は、医療と介護で改善できます」という。
適切にきちんと治療していれば介護は楽になるという、当たり前のことなのです。



これまでに広く浸透した「常識」を捨て、新しい「常識」を持ちましょうということです。
それは現実離れした難しいことではなく、奇跡というような成功確率の低いことでもなく、認知症の困った症状には適切な薬による治療をはじめに選びましょうという至って簡単な常識なのです。その上で、回想法や音楽療法などの楽しい方法で認知症の進行を抑えましょうということです。
我慢と忍耐を強いるだけの介護はやめて、理にかなった介護をしましょうということです。

2015/01/17

認知症を学ぶ教科書

 認知症を学ぶ教科書は、これでいぃんです

ここ1年余りの間、認知症に関する専門書といえば以下の書籍を何度となくくり返し読んだ。読んでは忘れ、忘れては読み直す。そういうくり返しの中から真に理解が深まっていった。

 ・コウノメソッドでみる認知症診療、日本医事新報社、2012年10月17日
 ・コウノメソッドでみる認知症処方セレクション日本医事新報社、2013年11年22日
 ・コウノメソッドでみる認知症Q&A日本医事新報社、2014年12月5日
 ・レビー小体型認知症 [改訂版]フジメディカル出版、2014年12月5日
 ・ピック病の症状と治療フジメディカル出版、2013年5月31日

アルツハイマー型認知症だけに絞り込んだ本が1冊もないのだが、これらの教科書内に登場するから、特別に必要とは思わない。アルツハイマー型認知症(ATD)以外の認知症をしっかりとおさえておけばATDを正しく鑑別できるようになる。すると、レビー小体型認知症やピック病をATDと誤診している医師をも見抜けるようになる。
コウノメソッド実践医の岩田先生(長久手南クリニック院長)は、これらを「認知症教科書五部作」と言い表しておられるのだから、医師でない者には必要十分なのかもしれない。

これらを体系化して系統立てしてみると、概ね下表のような「認知症治療学」としての一連のテキスト(教科書)となり、認知症とその治療から介護までを詳細に学ぶことができる。
しっかりと頭の中で整理できて覚えているかどうかは別として、実際にこれらすべての教科書を何度も読んで介護現場で認知症患者(施設利用者)を観ていると、以前は混沌としてカオスに満ちていた認知症のことがすっきりと見えてきたのである。誤診も不適切な処方も同様である。
但し、100%かというと絶対にそれはない。やはり、画像で確認しなければ分からないことは分からないし、医学教育を受けた医学部出身ではない私のような者にはせいぜい85%程度を理解して鑑別するのが限度だろう。介護しながら、大脳皮質基底核変性症(CBD)や進行性核上性麻痺(PSP)に気付いたことも、正常圧水頭症にも気付いたこともあるけれど、CT画像で確認しなければならないことは分からないのである。

これらの書籍をベースに、コウノメソッド実践医の先生方の治療経験を加えて編纂した「認知症治療学」の教科書が登場すればいいし、「認知症治療ガイドライン」として提唱されれば実用的でいい。抗認知症薬の製薬会社が参画していない(スポンサーでもない)ガイドラインなのだから、おかしなバイアスがかかっていないこともいい。

さらには、コメディカル向けに分かり易くした教科書となればいい。そうすると、認知症の治療から介護までがひとつの原理原則に沿った実用的なシステムとして機能することになる。

何も勉強していなければ、「介護力」というマンパワーで何とかしようとする。実に非効率的な「労働」である。あまりに異常な頻回のトイレ訴えは、トイレに行ったことを忘れているということ以上に前頭葉の機能低下とみるべきである。その利用者をよく観察していると前頭側頭型認知症(ピック病)であることに気付く。「先ほどトイレに行ったでしょ!」と言うと、屁理屈を並べて猛烈に怒り出す。当然、FTLD検査セットは0点である。「ウィンタミンでおとなしくしてもらいたい」と思う。

認知症は医療では解決できないこととして、暴言・暴力、大声・奇声、頻回のトイレ訴え、嚥下機能の低下、意識レベルの低下などに耐えながら介護する。そして疲弊する。
こういうことに気付き、医療に連携して介護負担の軽減を図る。それが、現在求められている「介護力」なのだろうと思う。



認知症診療にも厳しい審判が必要

外科医の手術は成功して当たり前なのだろう。患者家族としては、手術して治してもらって医療の恩恵を最大限に享受する。仮にうまくいかなかったとしても、最終的に結果をすべて請け負うのは患者とその家族である。だから、厳しい目が注がれる。
腹腔鏡手術で過去5年間に84人中14人が死亡したとして厚生労働省などの立ち入り検査が実施されたという。【転記引用:朝日新聞 1月13日付
第1回群馬大医学部付属病院前橋市)の40代の男性医師が、院内の審査を経ずに腹腔(ふくくう)鏡を使った高難度の肝臓切除手術を重ね、術後100日以内に患者8人が死亡した問題で、厚生労働省前橋市は13日午前、医療法に基づき同病院に立ち入り検査に入った。厚労省と市は、病院が昨年12月に公表した中間報告書と改善報告書を踏まえ、手術の状況や安全管理体制などを調べる。その後、厚労省は、検査結果を社会保障審議会医療分科会に報告し、同病院について、高度医療を提供して診療報酬が優遇される「特定機能病院」の承認取り消しも含めて検討する。 同病院の調査によると、2010~14年に同医師が担当した腹腔鏡を使った肝臓切除手術を受けた肝臓がんなどの患者8人が、術後100日以内に敗血症などで死亡。高難度の手術に必要な院内の事前審査を受けておらず、保険適用外なのに一部は診療報酬を請求していた。同病院は、手術前後の検討が不十分なまま手術が繰り返された点など、組織的な問題があったことを記者会見で認めた。 また、この医師が執刀した肝臓の開腹手術でも過去5年間で84人中10人が死亡していた。

認知症はどうであろうか。とても甘いと思う。
認知症そのものが死亡原因として死亡診断書に記載されることはないであろうが、レビー小体型認知症にアリセプトを投与して、ご飯が食べられなくなり、経鼻経管栄養の末に早い死を遂げたケース(私の親戚)。前頭側頭型認知症を治せずに病院から出られないケース(私の親戚)。
施設のショートステイを転々として受け入れ先の決まらないピック病の人。数え上げればきりがない認知症医療難民。治療の結果責任を、医師ではなく家族介護者や施設介護者だけが暗黙のうちに引き受けるのは納得がいかない。こういうことは、認知症の「真実」にも記載されている。

高騰する医療費は深刻である。それでも、診療報酬は介護報酬に比べれば高い。治療に失敗してももらえる相対的に高い診療報酬、失敗のツケを始末する相対的に安い介護報酬。その介護報酬は引き下げられることが決まった。
いよいいよ、福祉国家日本の崩壊が進むのだろうか。

2015/01/12

第1回 認知症治療研究会に参加しよう

認知症介護家族・介護従事者も参加しよう! 第1回 認知症治療研究会

詳細はこちらをご参照ください。

第1回認知症治療研究会が3月1日(日)に東京で開催される。コウノメソッド実践医第1号である岩田先生(長久手南クリニック院長)の抄録がブログで発表された(1月11日)。そのポイントは以下に集約されるのだろうと思う(同ブログより一部転記引用)。

「認知症は治せる」という共通の認識を持ち、介護者と医療者が連携するシステムを構築するために多職種教育が必要であるということは、私もまったく同感である。
このブログの前号で、左図に示す河野先生の著書を掲載した。これらを「認知症教科書五部作」と、岩田先生は仰っておられるが、まったく同感である。

私もこの「認知症教科書五部作」を全部読んで、介護現場で認知症を認知症患者(施設利用者)から学んだ。岩田先生は医師であり、私はただの介護職者であるが、立場こそ違え、辿り着いた所(ある意味、認知症医療の問題点と打開策)は同じなのだろうと思った。
コウノメソッドで認知症とその治療方法を学ぶ。患者(介護施設利用者)から謙虚に教えていただく。そういうスタンスが重要なのである。

事前に申し合わせをした訳ではないが、私が認知症治療研究会事務局に提出した抄録は以下の通りである。(実は、私も第1回認知症治療研究会に登壇させていただく。)
表現こそ違うが伝えたいことは同じようなことなのである。

認知症治療研究会は、医師のみならず介護家族や医師以外の方々にも広く入会いただけるので、入会して認知症を学ぶのも良いのではなかろうか。入会はこちらから

【抄録】
認知症患者460万人、その予備軍400万人と推計され、今後の認知症患者を取り巻く医療と介護の先行きが危惧されている。アルツハイマー型認知症(ATD)が認知症全体の60%程度を占めると推計されているから、専らの関心事はATDの予防とリハビリへの関心へとミスリードされているように思える。

また、第二の認知症と言われるレビー小体型認知症(DLB)にしても、診断も治療も誤っていることが散見され、レビーピックコンプレックス(LPC)への症状の移行が見逃されていることがある。前頭側頭型認知症(ピック病)の治療は惨憺たるものであり、家庭介護者や施設介護者の著しい介護負担増大を強いる結果となっているのが現状である。
本演題では、過去7年間に見たいくつかの事例を元に介護現場からの視点で認知症医療の問題点と課題について述べる。


認知症の診断と治療は医師の力量に依存するところが多いが、その診断の根拠となる患者の症状を如何に正確に伝えるかは患者の介護者に依存するところも多い。
患者に関する情報量は患者の介護者が圧倒的に持っているのだが、認知症に関する理解が乏しいが故に適切な認知症治療にまで辿り着けない現状がある。

医療において、「医者と患者は対等」と言われて久しいが、その対等な関係が担保され、両者が連携協力しなければならない最たる領域が認知症医療である。ところが、認知症患者の介護者のみならず医師にも認知症への理解不足が根底に存在するため、両者に共通する認識は「認知症は治らない」という希望無き現実を受け入れることである。

その共通認識は、「第一選択肢は非薬物療法、第二選択肢は薬物療法」となり、認知症医療現場から介護現場への負担の委譲になっているのである。
この委譲というのが適切に治療された結果であるとすれば、「認知症は治らない」こととして受け入れるほかないのであるが、不適切な治療の結果であれば、それは是正して行く医療-介護連携システムを早急に構築しない限り現在の認知症患者を救うことも、2025年問題も解決できない。


認知症の第23期にある高齢者の多い介護施設においては、ピック病やLPCの患者の周辺症状を治療するこが最も重要であると考える。治療が不適切であったり未治療のこれらの患者は、介護現場の負担を著しく増大させる極めて大きな要因だからである。

ピック病やLPCに気付き、適切な治療をすることによって得られる「認知症は治せる」という成功体験は、「第一選択肢は非薬物療法」、「第二選択肢は薬物療法」という従来からの認識を覆すことのみならず、認知症医療と介護の抱える問題点を払拭させるに足りる可能性を持っていると期待される。

2015/01/10

認知症介護通信15/01/10


2015年 認知症の旅
正月元旦からインフルエンザが施設入所者にも職員にも蔓延していててんやわんやの大忙しである。法定基準をいくらか上回る陣容で介護していても、人手が足りないことに変わりない。せめてあと1人増員されて4人体制になればよいのだが、経費の関係からか内部留保アップの目的だけからなのか、求人を出しても人が集まらないだけなのかは知らない。そういう状況にあって、2人で14人のお世話をする非常事態は辛い。

入所者に加えて、ショートステイ利用者が認知症の周辺症状で忙しさに拍車をかける。邦楽のBGMが館内に流れ、いくらか正月らしき雰囲気に包まれている中、館内放送があった。「Hさん、そちらに向かっています。」 回廊式の廊下を独りで徘徊しているから注意するようにという業務連絡である。見守りのために徘徊に付き添う余裕すらないのである。

Hさんは、ただのアルツハイマー型認知症(ATD)である。アリセプト+メマリーの影響で「陽性症状」が酷いだけである。そのため、徘徊が酷くなっている。

【ここからSFモード】
2015年、地球を周回する資源探査宇宙ステーションは未知のエイリアンからの侵入を受け、船内で攻防が展開されていた。デメンティア星からの襲来とされているが、まだよく分からないことも多い。
 


乗組員A:「艦長、エイリアンが第1ブリッジに接近しています。」
艦長:「乗組員全員、認知症スコープを装着しろ。」
艦長の指示で乗組は認知症スコープを装着した。

「認知症スコープ」とは、認知症鑑別を瞬時に行う装置のことである。装着してエイリアンを見ると、ピックスコアとレビースコアがビューファインダーにスーパーインポーズでデジタル表示される。抗認知症薬と向精神薬の作用/副作用を分析して表示される機能も標準装備されている。私は「認知症スコープ」を使わなくても、認知症を鑑別できるのでこのスコープは要らない。


乗組員B:「エイリアン接近を目視確認した。」
乗組員A:「目視ではダメだ。認知症スコープで確認しろ。」
乗組員B:「認知症スコープON。ピックスコア:0、レビースコア:0です。」
乗組員A:「ATDだろうな。Mモードに切り替えて薬物反応を見ろ。」
乗組員B:「アリセプト反応ポジティブ、メマリー反応ポジティブです。」
乗組員A:「艦長、第1ブリッジでは防戦不能です。乗組員が足りません。」
艦長:「第1ブリッジ、防御壁閉鎖せよ。」
乗組員A:「防御壁閉鎖完了。」
艦長:「これでエイリアンの行動範囲が暫くは狭まるだろう。」
【ここでSFモード終わり】

ドンと鈍い音が響いた。私は見守りをしながら疲れのためうたた寝していたようだが、防火扉の閉まる大きな音で夢から目が覚めた。徘徊のルートを狭めるために、やむを得ず防火扉を閉めたのである。「認知症スコープ・・・、皆に配りたい。医者にも!」



介護現場では転倒や褥創のことにはやたらと神経過敏になることはあっても、認知症のことには鈍感で疎いことがよくある。たぶん、よく分からないこととして関心が薄いのであろう。
「アルツハイマー型認知症」も「レビー小体型認知症」も「前頭側頭型認知症」も「血管性認知症」も皆まとめて単に「認知症」なのである。

だから、認知症の周辺症状を、性格に修飾された言動、排泄(特に便秘)、環境の変化を原因としてしか観ない傾向にある。これらは決して誤りではないが、不十分な理解の仕方である。服用している薬の作用/副作用の視点からも認知症を観ることが重要なのである。
介護現場で認知症の人と、お世話する職員/スタッフの動きをつぶさに観ていると、下記のことが分かる。
 ・転倒事故のないように、リスクを事前に察知して防止に努める。
 ・異食のないように注意を払う。
 ・誤嚥のないように細心の注意を払い食事介助する。
 ・大声や暴力で他の利用者が不穏にならないように気を配る。

これらは当然のこととして、必要十分条件を満たすかどうかはともかく励行していることである。それでも事故は起こるし、不穏になって荒れる時には荒れるのである。性格、体調、環境などの因子で認知症の周辺症状を理解していると仮定して、それですべてが説明できるのか? できないのである。
それでは、どうやって理解できるようにすればいいのか。「認知症スコープ」を入手すればよいのだが、そんなモノは売っていない。類似するモノがもしあるとすれば、CTスキャナかSPECTであるが現実的ではない。
脳萎縮や脳血流画像を見ても、100%に近い精度で鑑別できる訳ではない。画像診断はあくまでも補足的ツールなのである。画像診断装置がなくても認知症を診ることはできる。


ということは、適切な知識があれば認知症を医師でなくても鑑別できるのである。ここで「診断」と言わずに「鑑別」と表すが、医師でなくてもちゃんと正しく認知症を鑑別できればそれは「診断」に等しい。

コウノメソッドでは、画像診断装置を用いなくても認知症を診断できるように設計されている。だから、「医師でなくても、85%の精度で認知症を鑑別できる」という。その方法を身につけるには、以下に挙げた書籍で認知症とその治療方法を学べばよい。症例と治療例が具体的に記載されており、認知症を深く学べるようになっている。
 ・コウノメソッドでみる認知症診療、日本医事新報社、2012年10月17日
 ・コウノメソッドでみる認知症処方セレクション、日本医事新報社、2013年11年22日
 ・コウノメソッドでみる認知症Q&A、日本医事新報社、2014年12月5日
 ・レビー小体型認知症 [改訂版]、フジメディカル出版、2014年12月5日
 ・ピック病の症状と治療、フジメディカル出版、2013年5月31日

認知症だけが介護ではないが、必須課題であることに間違いない。介護はただでさえ過重労働でストレスの多い仕事である。なんでもかんでも薬で解決できる訳ではないが、薬に頼ることで介護が楽になるのであれば、それを選択しないというのは現実的ではない。

これらの書籍をすべて読んでみた。そして、施設入所者の認知症をよく観察し続けたのだが、ひとことで言えば、「介護には実に無駄が多い」という現実に思い知らされるのである。その無駄の原因を突き詰めていくと、治療がまずいということに気付く。

「認知症を制する者、介護を制する」などと妄想を膨らませてしまうが、「ピック病を制する者、介護を制する」とも言える。それは、認知症の陽性症状を制することに他ならない。アルツハイマー型認知症のもの忘れは、クローズアップされるには小さな症状に過ぎない。

2015/01/03

認知症介護通信15/01/03

正月、だけど介護は年中無休です
「正月くらい住み慣れた家に帰って家族と一緒に過ごせばいいのに・・・」毎年そう思いながら施設入所者のお世話をする。実際のところ、誰も帰らないのである。正確には連れて帰ってもらえないか、帰る家がないのである。この傾向は有料老人ホームよりも特別養護老人ホームにいる老人に多いような印象である。

一方で、正月元旦なのだから、ショートステイに来なくて家に居ればいいようなものをショートステイで元旦を迎える老人もいる。家庭では、年末年始は忙しくて介護に手がまわらないから預けておく方がいいのだろうか。また、親の年齢が90歳代ともなると、その子どもの年齢が70歳代などという老老介護の実態もある。

遠方に住む子どもが帰省して孫を連れて、あるいは孫がひ孫を連れて、面会に来られることもある。「自分でご飯を食べさせ、排泄の世話をしてみなさい!」などと思ったりもするが、家族に合ってほほえむ光景を見るとほんの少しばかりは救われるのだが、年末からインフルエンザの流行で面会禁止の状況である。職員もインフルエンザで自宅療養となっている者も数名いる。
年中無休の施設であるから正月休みもなく、私は年末年始に6日連続勤務である。

「鶏口牛後」は、「鶏口となるも、牛後となるなかれ」のことで、大きな集団・組織の末端にいるよりも小さな組織・集団の先頭に立つ方がいいという意味の故事諺である。

「認知症は治せないよ」という大きなあきらめの集団にいるよりも、「認知症は治せますよ」という小さな希望の集団にいてより良いQOLを得ることの方が賢明な選択なのである。
更には、大きな一錠を飲むよりも、小さく砕いた適量の少量を飲む方が良いという認知症治療の鉄則を表す「裏ワザ」、否「ことわざ」でもある。


コウノメソッドで理解する認知症[5]

コウノメソッドの治療哲学は漢方医学に通ずるところがある。「漢方」という名称は、日本へ伝来した西洋医学である「蘭方」と区別するためにつけられたものであり、その起源を5~6世紀に日本に伝来した頃にまで遡ることができる。日本の風土・気候や日本人の体質に合わせて独自の発展を遂げ、17世紀頃に体系化され現在に継承されている日本独自の医学である。

漢方では、患者の個人差を重視した治療を行う。病名が同じでも、体質や体型、抵抗力は人様々であり、その違いを「証」という尺度で判断する。コウノメソッドでは、認知症の周辺症状を「陽性症状」・「陰性症状」に分類する。

陽性症状
介護者が精神的ストレスを受けることから、最も嫌われる周辺症状の総称。
 ・内的いらだちからくるもの:易怒、暴力、大声
 ・不安、焦燥からくるもの:徘徊、介護抵抗
 ・認知力低下から派生するもの:妄想
 ・脳障害からくるもの:不眠、過食、幻視

陰性症状
本人が何もしないために介護者による身体介護が増える周辺症状の総称。
 ・不安からくるもの:拒食
 ・認知力低下から派生するもの:うつ状態
 ・脳障害からくるもの:無言、無為(アパシー)、食欲低下

上記の症状をもつ認知症患者をキャラクター分類として、「陽証」と「陰証」、「中間証」という。症状を診て治す「対症療法」としては最もシンプルな分類といえる。西洋医学においては、はじめに「診断ありき」なのであるから、「陽証」、「陰証」などとして治療するには些か理解し辛い向きも否めない。

陽証
陽性症状が強い患者のキャラクターのこと。

中間証
周辺症状である陰性症状や陽性症状が消失し、中核薬の標的となる中核症状のみが存在している状態。

陰証
陰性症状が強い患者のキャラクターのこと。

しかし、アルツハイマー病なのかレビー小体病なのか、あるいはこれらの混在する病気なのかは、患者の死後脳を病理検査してみなければ解らないのであるから、症状を診て治す以外に方法が現在のところないのである。

【参考資料】
 ツムラ 漢方情報

 コウノメソッドでみる認知症Q&A 日本医事新報社