2015/02/26

認知症介護通信15/02/28

いよいよ3月1日(日曜日)、「第1回 認知症治療研究会」が東京品川で開催されます。
この研究会(学術集会)では、認知症の原因であるアルツハイマー病やレビー小体病、その他神経変性性疾患のメカニズムのことは話題にならないでしょう。だから、「アミロイドβタンパク」とか、「タウタンパク」という言葉も登場することはないでしょう。
また、「認知症患者の立場で暖かく見守りましょう」、「地域ぐるみで支えましょう」とか、「予防のため、進行抑制のためリハビリをしましょう」などというありきたりの言葉すら出てくることもないでしょう。

「こうやれば、認知症は治せます」という極めて現実的なことがメインテーマです。遠い将来のことではなく、「今日困っている認知症の症状を明日には解決しましょう」という、極めて現実的で実践的な学術集会となるでしょう。もし、そうでなければ、わざわざ新たな研究会(学会)を立ち上げる必要などないのですから。


翌2日(月曜日)には、同じく東京品川で、河野先生の「認知症の最高レベルの治療法についてのわかりやすいお話」という講演会があります。
どちらの会場も事前申し込みが必要なのですが、満席になっているとのことです。
「認知症は治らない」という常識が、「認知症は治せる」という常識に変わる2日間です。


認知症はアルツハイマー病やレビー小体病など様々な脳の神経変性(原因)によって生じる、遂行機能が阻害されて社会生活を営むことができなくなった症状(結果)なのです。
原因そのものを根本から治療することは残念ながら現在の医学ではできませんが、進行を抑えることはできるようになってきました。

ここで「認知症は治せる」という意味について考えてみましょう。
 ・認知症の原因である脳神経の変性そのものは病理学的に治療できない。
 ・認知症の周辺症状を改善し、穏やかな生活に戻すことができる臨床的完治はある。
 ・認知症の周辺症状を改善することによって、中核症状も改善することもある。  

さらには、
 ・中核薬の抗認知症薬だけでなく、少量の向精神薬との組み合わせ利用で効果がある。
 ・周辺症状は、中核薬の抗認知症薬を減らせば効果がある場合もある。
 ・サプリメントの併用、または単独利用でも抗認知症薬と同等の効果がある。

「認知症は治せる」ということは、奇跡でも大袈裟な表現でもありません。当たり前のこととして、これまでの認識を改めるべき時になっているのです。
ある意味、認知症とその治療は、「情報戦」と言っても過言ではないのです。しかし、その情報のほとんどは、認知症は現在の医学では治せないのだから、
 ・介護の力で何とかしましょう
 ・アルツハイマー型認知症の予防に努めましょう
 ・リハビリをしましょう
 ・地域で見守りましょう
などという情報で溢れています。これらの考え方も決して間違いではありませんが、決定的で核心を突くポイントが欠けています。「コウノメソッド」という系統立てて体系化された治療方法を積極的に利用するということです。

インターネットという強力なツールを手にした今日、これを活用して情報を得るのは手軽で便利です。けれど、情報があまりに多過ぎて逆に見えなくなることもあるものです。地方に住んでいる人には講演会に行くには時間と費用の面で不利なこともあります。
やはり、きちんとまとまりのある書籍で知識を固めて「情報武装」するのが手堅いやり方ではないでしょうか。

今回、研究会に参加されない方々には、この5冊。
 今回、講演会に参加されない一般の方々には、この4冊。
じっくり読んで認知症医療の現在を熟考して欲しいものです。ある意味、これらの書籍で述べられていることが、冒頭に紹介した集会に凝縮されているのです。

認知症医療は、まだまだ発展途上にあります。「認知症外来」を標榜している医療機関に行ったからといって、患者とその家族が望むような治療成果を得られるという保証はありません。このことは、我が国固有のことではなく、どの国でも同じでしょう。

「医者に任せておけば安心」とか、「医者の言うことを信じて」などということは患者介護者が勝手に思い込む妄想です。認知症患者自身の様子をしっかりと観て、患者介護者の話しを謙虚に聞く姿勢が強く求められているのです。認知症医療とは、そういう類の治療姿勢が肝心なのです。
医者にしっかりと情報を伝えて聞いてもらうためには、患者家族も施設介護者もしっかりと認知症とその治療方法を学ぶことが重要不可欠なのです。もし、それでもどうしよもない医者には見切りを付けて逃げ出すのが賢明な選択というものです。

2015/02/19

認知症介護通信15/02/21

同じことをくり返し言う

「同じことをくり返し言う」、あるいは「同じことをくり返し尋ねる」と聞いて、アルツハイマー型認知症(ATD)を思い浮かべることでしょう。記憶障害のため、さっき言ったばかりのことを何度となくくり返しいうのです。

「おしっこ、おしっこ!」、「うんこ、うんこ!」とトイレに連れて行くことをくり返し要求する。特に用件がある訳でもないのに、「ちょっと、ちょっと!」と人を頻繁に呼び止める。「今日、何曜日?」と1日に何度も尋ねる。「弁当まだ?」とか、「お昼ご飯まだ?」と何度も尋ねて確認する。
これらは、「アルツハイマー型認知症の人が同じことを言う」のとは、症状のニュアンスが異なるのです。同じ行動をくり返す常同行動です。ピック病(前頭側頭型認知症)の症状なのですから、

 排泄欲という人としての基本的欲求を尊重しましょう
 寂しいのだから、傍らに寄り添って話しを聞きましょう

などという、きれいごとを並べたケアプランなどを考える以前のこととして、ピック病と鑑別して治療を受け、少なくとも、

 ウィンタミン(朝:4mg + 夕:6mg)

という薬物療法で困った陽性症状を抑えることの方が優先されるべきなのです。


こういう治療を受けていない認知症の人には、(気の毒なのですが)気遣いも時間も使うことなく(気持ちのゆとりもなく)適当にあしらって、親身になって関わり合わないようにしています。とはいうものの、完全に無視してしまうと「ネグレクト」となってしまうので、「ハイ、ハイ」と返事だけはしたり、手を振って動作で応えるだけはするようにしています。

 アルツハイマー型認知症の場合 
 ひとつの連続する会話の中で、同じことを何度も繰り返し言う。

 ピック病の場合 
 1日に何度も同じことを繰り返し言う。大きな声で叫ぶように、脅迫的に言う。

「同じことを何度も言う」と、ひと言で表現しても症状はまるで異なります。認知症に詳しくない医師が家族への問診で聞いたら、アルツハイマー型認知症との診断材料のひとつになるかもしれませんが、まったく異なるタイプの認知症の症状なのです。もっとも、前頭側頭型認知症(ピック病)を知らない医師は、「アルツハイマー型認知症か? 前頭側頭型認知症か?」 と診断を迷うことなく、アルツハイマー型認知症と診断するのでしょうけれど。


笑って許せる症例
ピック病の症状のひとつに、「脱抑制」というのがあります。ふざけた行動、母親の乳房を触ったり尻を突く(「ピック病の症状と治療」、p.22、フジメディカル出版)といった症状(行動)です。あまり遭遇することのない症状なのですが、最近これに相当すると思われることがありました。

Tさん(女性、90歳)はおとなしくて、ほとんど手のかからないタイプのピック病です。もしかすると、年齢の割にとても元気が良いのでAGD(嗜銀顆粒性認知症)なのかもしれません。声かけして、挨拶に手を差し出して握手を求めると、私の腕を掴んで噛みつくような仕草をします。勿論、本当に噛みつきはしません。

ある日のこと、トイレに誘う声かけをすると、Tさんは「お金をちょうだい」と言うのです。口数の少ない人なので私は驚きました。「お金をどうするのですか?」と、私が尋ねると彼女は言いました。
「お金をくれたら、一緒に寝てあげる!」
ピック病(あるいはAGD)なので、「脱抑制」だと直感しましたが、思わず笑ってしまいました。もし、家族が傍らに居てその様子を見ていたら、赤面したことでしょう。


問題集を解くかのようにQ&A

「コウノメソッドでみる認知症Q&A」(日本医事新報社)を2回目の精読中です。コウノメソッド実践医からの質問に、河野先生が答える一問一答集ですから、どのページからでも読み進めることができます。
   質問:問題 
   回答:正解 
   解説:解説 
という構成なのですから、これはもう数学や物理の入試問題の参考書で勉強するのと同じですね。但し、それが唯一絶対の正解なのかというと、必ずしも唯一とは限らないこともあるかもしれません。何故なら、認知症患者それぞれに個人差、症状の違いがあるのですから。

数学や物理などの問題であれば、必ず唯一の正解に辿り着くようになっています。一方、認知症の治療の正解、即ち「効果あり」という正解はいつでもすぐに得られるとは限りません。だから、興味の尽きない現象だとも言えます。「現象」と例えるのは、認知症を心理学的な視点で見ていない私の習性です。

何故、化学や地学に例えないのか・・・ 理由は簡単です。化学は苦手科目で、地学は履修していないから。国語は苦手なので、文学的にも捉えていません。

経験に基づいて何冊、何十冊の本を書き、それが何万部、何十万部と買われても、「エビデンス」とは言わないとされているのです。エビデンスとは、「この治療方法が良いと言える証拠」のことです。医療分野では、たくさんの患者に実際に使って試す調査研究をして、薬や治療方法がどれくらい効果があるのか確かめています。その調査研究によって薬や治療方法が良いと判断できる証拠のことです。

実はこのエビデンスという言葉に私は弱いです。しかし、大規模実証実験という言葉にはもっと弱いです。30年にわたり、約35,000人にも及ぶ膨大な(多くの失敗ともっと多くの成功)治療経験から導き出された結果が「コウノメソッド」であり、大規模実証実験の成果なのですから、素直に事実として受け止めておくのが賢明なのだと思います。

同等規模の治療経験がないまま、「エビデンスではない」と決めつけるのであれば、反証する「エビデンス」を示して、論文にして発表してみては如何であろうか。

2015/02/14

認知症介護通信15/02/14

ザ・ピック ・・・ かなり呆れた症例
新しくショートステイの利用者を受け入れました。
「この人、ピック病(前頭側頭型認知症)なんだろうね」と、直感したのですが、やはりピック病でした。

第一印象・・・奇妙な感じ、ややびっくりまなこ、大きな声で叫びまくり
(この段階で概ねピック病だと仮の鑑別がつきます。)

忙しい上に、休日明けだというのに疲労困憊の体調だし、その新しい利用者の見守り役でもないから、時々様子を観察するだけの私でした。

これまでにピック病であると鑑別したショートステイ利用者は5人以上います。ショートステイ利用者総数は大体40人ほどなので、10%以上がピック病を占めることになります。ちなみに、全員がピック病と診断されていません。(ピック病であると正しく診断されている人にまだ会ったことがありません。)
ほとんどの場合、アルツハイマー型認知症との診断とアリセプトの処方なのですから、効果があろうはずもなく介護負担が増すだけなのです。ただ、この利用者はアリセプトが一旦処方されてはいたものの、現在は服用していません。

鹿児島認知症ブログでは、外来での自験例でFTLDの占める割合が14%となっており、私の遭遇した事例も概ね同じようになります。施設入所者で算定しても、やはり10%台になります。ただの偶然なのかもしれませんが・・・
認知症外来に訪れた認知症患者のグラフ化
平山先生の自験例内訳
利用者の昼食を終えてから職員の昼休みとなります。件の利用者はベッドに寝かされていました。あまりにもうるさくて他の利用者に迷惑がかかるからです。ベッドに寝かされて、「警察を呼んでください。殺される!」などと大声をあげていました。

私はピック病であることを確かめるために、ベッドの横でひざまずき支離滅裂の話しに付き合うことにしました。「何処の警察ですか? ○○署ですか、□□署ですか?」などと話しを合わせて止めどなく話しが続きました。

いくらか話しの「波長」が合ってきたところで、FTLD検査セットをやってみました。
 ・利き腕はどちら? ・・・ 右よ、こっちの方が力が入る
 ・右手で肩を叩いて ・・・ 沈黙して無動
 ・「猿も木から落ちる」の意味は? ・・・ 無言
 ・「弘法も筆の何?」 ・・・ 無言
「やっぱりね、ピック病だね」と思いました。

職員の昼休みが終わると、入居者が集まってレクレーションの時間です。遠巻きに様子を見ていると、他の人たちと一緒になって歌をうたったり、手をあげて体操をしていました。

どうもこの利用者は、独りにされると逆上して叫ぶ傾向にあるようです。だからでしょう、しきりに娘さんの名前を大声で呼び続けていました。これだけのピック病の症状があるにも拘わらず、診断がアルツハイマー型認知症です。そして、一時期アリセプトが処方されていたのです。
同僚の職員は、「こりゃ~、家族が大変だろう」と同情していましたが、私は「
このくらいのピック病も診断できないのか!」と呆れておりました。1泊2日のショートステイで持ち込んだ薬はマイスリーのみ。幸いにして夜は静かに眠っていたようで、翌日ショートステイを終えて家族の元に無事帰りました。

この本を読めば、医師でなくてもピック病の鑑別は可能なのだということを改めて確信した症例でした。「独りにされると逆上する」・・・ 寂しいからではなく、症状なのです。
ショートステイを利用するにあたり、介護計画書(ケアプラン)を作成しなければなりません。たぶん、「独りで不穏にならないように、声かけを密にする」、「レクレーションに参加して、他人とできるだけ接する」などと書かれていることでしょう。まったく無駄なことで、治療が先決であることは言うまでもありません。

2015/02/08

2015年、認知症医療に新たな展望が拓かれる

介護報酬減額のニュースの中で・・・

介護報酬減額が決定され、いよいよ介護の世界は終局を迎えるのか・・・? どうなるのか分からないのですが、それでもじいちゃん・ばあちゃんの生活を守らなければなりません。それが報恩感謝というもの。人として忘れてはならない、日本の精神文化のひとつでしょう。

介護、とりわけ認知症患者を取り巻くニュースは暗い中、希望の持てるニュース報道がありました。
産経ニュースに、認知症治療研究会の記事が掲載されました(2015/02/07 記事はこちらから)。

JPN 47NEWSに、認知症治療研究会の記事が掲載されました(2015/02/08 記事はこちらから)。

第1回認知症治療研究会の案内はこちらから



2015/02/07

大脳皮質基底核変性症

大脳皮質基底核変性症・・・頻度少ないの?

「この人、どう見ても大脳皮質基底核変性症(CBD)だよね」という症例は、これまでに3症例あります。いちばん初めの症例は医師の診断によるもので、残りの2症例は私の鑑別によるものです。その2症例は共に70歳代後半の女性で、症状が進行していて寝たきりの全介助が必要な状態ですから、CBDの知識があれば鑑別は可能です。但し、生前病理診断は無理なようですし、また画像診断したわけでもないのですから、その点は気がかりなところです。

素人でも気付けるCBDの特徴は以下のとおりです。
・ゆっくりした症状の進行
・左右差のある鉛管様筋固縮
・無動、無言
・偽性球麻痺(嚥下障害、構音障害)
・尿失禁 
などがCBD診断基準に挙げられています。精神症状として、レビー小体型認知症、あるいは前頭側頭型認知症のようにも思える症状があります。

CBDの正確な発生頻度は不明ながら10万人に2人くらいらしいのですが、私はこれまでに400人(正常加齢、MCIから認知症末期の人)足らずの高齢者しかお世話していないのですが、(少なくとも)3症例に遭遇したことになります。
おそらく、実際にはもっと発生頻度は高いのではないでしょうか。ブログ「笠間の診察室から」(2015/01/27)では、病棟で担当する患者10人中の2人がCBDだというのです。

1番目の症例の人は幻覚とパーキンソニズムがあり、歩行に介助が必要でしたが、食事はなんとか自力でできていました。軽い認知症の症状(一見するとレビー小体型認知症のように思える)ではありましたが、有料老人ホームで何とか暮らせるレベルでした。

2番目の症例の人は、誤嚥性肺炎で入院して経鼻経管栄養となり、施設での看護能力の理由で退去となりました。この人は他県の病院で統合失調症と診断されていたようです。2年余りの間お世話させていただき、馴染みの関係を築き、時々冗談を言って笑わせることもできるようになったのにとても残念でした。

3番目の症例の人は、CBDであるとの診断はなくただ認知症と診断されていましたが、私がCBDと鑑別するのに長い時間はかかりませんでした。既にコウノメソッドでCBDを鑑別できるようになっていたし、2番目の症例でCBDの特徴を実際に見て把握していたのですから。

最近、いよいよ嚥下機能が悪化していたので、「Iさん(2番目の症例の人)と同じ経過を辿ることになりますよ」という主旨の警告を看護師に発していたのですが、手を打つ前に入院となりました。やはり、入院した病院で、経鼻経管栄養となるようです。そうなると、もう施設に戻ってくることはできません。
施設入所時には無言で、漫画で言う「ヌー」とした状態でしたが、やっとのことで簡単な会話ができるようになり、いくらか笑顔を見せるまでになりました。因みに、CBDとしての治療はまったく受けていません。


溺れている人を見つけた時、自分で助けるだけの能力がなければ大きな声を上げて誰か助けを呼ぶものです。助けを求めて呼んだにも拘わらず、理解されなかった理由のひとつ、
 勉強不足!
ただこのことが問題なのです。



人は往々にして自分の土俵(得意分野、知っていること)で相撲をとろうとするものです。私だって同じです。ただ、認知症とその治療という「土俵」はまだ新しくて未成熟な分野なのです。たぶん、医学部や看護学校でもまだまだ教育の整備が整っていないのでしょう。(私は行ったことがないから分からないのですが。) だからと言って、無知のまま「土俵」を築くことなく、医療の手を差し伸べられないことは避けたいものです。

やはり、医師でなくても、「認知症治療学 5巻セット」は読んでおきたい。そして、知識と共に重要なのは、
組織一丸となって認知症医療・介護に取り組むシステム化
を推し進めることなのです。