2015/04/25

ショートステイから見えてきたこと

ショートステイにみる無駄と虚しい介護

最近の傾向として、数日間のショートステイ利用者(リピータ)に混じって、数週間の新規ショートステイ利用者が増えてきています。それも、とても手のかかる人ばかり。調べてみると、何処か受け入れ先の施設を見つけるまでの「つなぎ」としての利用です。


それはそれでよしとして、せめてショートステイ利用中に適切な薬物治療を見つけ出して、穏やかに暮らせるレベルにもっていくというケアプランが立てられないものでしょうか。ケアプランには大概当たり障りのない美辞麗句を並べていることが多いのであまり真剣に読みませんけど。

入院する程ではないにせよ、家庭でなく施設だとしても社会適応能力を回復させるべく適切な治療が必要なことに間違いありません。適切な治療とは、症状に合った薬の処方のことです。記憶力を良くする(中核症状への治療)こと以上に、困った周辺症状を改善することの方が重要なのです。


ただ受け入れ先を待つだけというのは、実にもったいない、まったく無為なショートステイ利用期間なのです。


あの施設でショートステイを利用すると・・・
認知症を正確に鑑別してくれる   
だから、適切な治療に繋ぐことができる!

そういうサービスがあっても良さそうなものです。


やはり前頭側頭型認知症(FTD)と鑑別した招かれざるお客

ショートステイ利用のKさん(男性)が新しく利用を始めて数週間が経過しました。見守りの目が離せない、厄介な招かれざるお客ですが、施設入所待ちだというのです。
「先入観をもって見る」という姿勢は時として思わぬ失敗に到ることもあるのですが、柔軟な思考と共に持つ先入観というのは役に立つのではないでしょうか。このKさんは、ひと目見た瞬間から、FTDなのだろうという先入観で見ていました。
 ・帽子を被り、どことなく場違いで妙な服装。
 ・話しは通じるものの、一方的に自分の思いだけを主張する。
 ・声かけに応じて座るもののソワソワして落ち着かない、じっとしていない。

びっくり眼なし、ふらつきなし、ボーっとした感じなし。「ないない尽くし」なので、アルツハイマー型認知症とも思えるのですが、私の一次鑑別はFTDでした。これはただの勘です。

それが日を追う毎にFTDの特徴が揃ってきました。
 ・急に立ち上がり、他の利用者の部屋に入り、ベッドで寝ている人に話しかける。
 ・傍らに座っている人を叩く。
 ・あたかも横に人が居るかのように大きな声で話しをする。
 ・夜中にもかかわらず、大きな声で独り言をいう。
 ・入浴を頑なに拒む。(但し、数日間の入浴拒否のあとは、おとなしく入浴した。)
 ・声かけに対して、屁理屈を並べて怒り出す。

総じて周囲への気遣い・配慮などまったくない上記のような症状から、FTDとみて間違いないでしょう。介護者はこれだけの「状況証拠」を医師にきちんと話せるようにならなければなりませんし、医師もこの話しを聞いたら前頭側頭型認知症だと診断できなければなりません。

そして、この人の場合、周辺症状への対応として、ウィンタミンを朝:4mgと夕:6mgから始めて、最大75mgまで適切な服用量を見つけ出すことです。中核症状へは、リバスタッチかレミニールを。更には、フェルガード100M。

こういう適切な治療を受けて、もしも在宅での介護力があるのなら家に帰る。帰れないのであれば、施設入所へ。だらだらと(しかも、施設職員と入所者に迷惑をかけて)ショートステイを利用しても、あまり意味のないことなのです。


 介護施設は認知症高齢者の「乳母捨て山」ではない。 

私にしてみれば、症状から認知症を鑑別する研鑽ができて勉強になるのですが、認知症に感心のない職員にしてみれば迷惑なだけの招かれざるお客に過ぎないことは言うまでもありません。因みに、私が鑑別して認知症診断の誤りと不適切な処方に気付いて指摘しても、その情報がケアマネや家族に伝わることは決してありません。



簡単に実践医につないだ症例

近所に住む老夫婦とは40年以上の近所付き合いなのですが、私の実家に遊びに来た際に、「ウチの主人が呆けてきた・・・」という話しからフェルガードを試したいということになりました。

母からその話しを聞いて、私はそのご近所さん宅に行きました。ご主人(Tさん)はこたつにちょこんと座り愛想良く私を迎えてくれました。挨拶したあとのこと・・・
 ・ピックスコア:0点
 ・レビースコア:0点
 ・「桜・ねこ・電車」テスト:2つ正解
 ・影絵テスト:×
 ・時計描画テスト:○

以上のことからアルツハイマー型認知症の初期と鑑別して、コウノメソッド実践医のところに行くように助言すると、すんなりと聞き入れてくれました。話しを色々と聞くと、「前に行った病院では、なんか薬が出たけど、どんどん増えるばかりで効果がないからやめた」とのことで、それでいてやはり、認知症の進行が気になると言うのです。

その後、受診してきたTさんの奥さんから、「良かった。あなたがやったことと同じようなことを問診された」というのです(当たり前のこと)。
それで、前医のところではどうだったのか尋ねてみると、まったく違うと奥さんは言うのです。そうだろうねと私は思いました。初診時からなのかどうかは不明なのですが、メマリー(20mg)が処方されていたのです(お薬手帳の古いのが無くて詳しい経過は確認できず)。

 初診からメマリーを出す医者は信用しない方が良いのです。 

更にその後、2回目の受診をして、「遠いので(車で30分程度かかる)、フェルガードだけにしたい」と言うのです。老夫婦2人暮らしで、子どもに連れて行ってもらうこともできず、他人の協力を得て受診するのも負担になるというのが理由です。

たしかに考えてみれば、アリセプトの効果はせいぜい10ヶ月程度なので、フェルガードだけで長期戦に対処するというのであればそれも良いかと思いました。やはり、車や公共交通機関での通院というのは、老人にとっては負担になるのです。
近くに在って、気軽に通えるコウノメソッド実践医が居る、というのが一番の理想ですね。何十年と地域に根ざした町医者(院長が2代目というところもある)でありながら、馴染みのかかりつけ医でありながら、認知症に関してはまったく当てにならないというのは実に寂しいものです。


【注記1】 「桜・ねこ・電車」テスト
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の4番目のテストです。
「桜・ねこ・電車」を、時間をおいてから復唱させることで、記憶能力の簡易的なチェックができます。ちょとしたゲーム感覚で遊びにも取り入れています。

【注記2】影絵テスト
下の写真のように、子どもの頃にやった影絵遊びのように、両手でキツネを作ります。ATDの場合、逆キツネができません。これも、ゲーム感覚で遊びにも取り入れています。

【注記3】時計描画テスト
時計(アナログ式)の文字盤の絵を描くことができるかどうかで、ATDの鑑別をします。
これを応用して、習字のレクレーションで四文字と左に書く自分の名前がどのくらいきちんと書けるか見ます。ATDの進行につれて構成障害も進行しますから、文字の配置が乱れてきます。数年分の習字作品を保管しておき、見比べてみると一目瞭然です。レクレーションで習字をすることがあれば、大切に保管しておきましょう。


コウノメソッド認知症専門クリニック開院

千葉県市川市に「市川フォレストクリニック」が開院する。実に頼もしくて羨ましいと思うのです。それも、どこにでもある「もの忘れ外来」ではなく、「コウノメソッド認知症専門クリニック」と言うのですから、ウチの近所にあったら真っ先に連れて行きたい。

現実的かつ極めて効果的には、全国の何処にでもあるコンビニのごとく、どこの医療機関でも当たり外れなく認知症の治療が受けられるようになることです。
医者を選べば認知症は良くなる」 このクリニックの院長は、その医者のおひとりなのだと思います。



真実を知って驚いた名曲の歌詞
とても心地よいメロディー、透き通った歌声。結婚披露宴で流れるであろうこの「LOVE IS ALL」(椎名恵)という歌。長らく曲名も誰が歌っているのかも分からず、私達夫婦で探していましたが、やっと分かりました。そして、原曲を探し出して歌詞を見て、びっくり仰天!



結婚披露宴で歌いたくなるような歌なのだけれど・・・




きれいなメロディーだけれど、原曲の意味を知らない方が良かった・・・

2015/04/18

認知症介護通信15/04/18

氷山の下にはもっと大きな氷塊がある
海面に浮かぶ氷山は全体の10%で、残りの90%は海面下にあるという。膨大なデータ(海面下)に裏打ちされた結論(海面上)が、「認知症は治せる」というのであれば、それは事実として素直に受け入れておく方がすっきりしていいものです。
海面下の氷塊
認知症の施設利用者のお世話をしながら、症状を毎日のように観て理解を深めていくこと。とても地道なことなのですが、継続していくうちに段々と氷塊が大きくなってきます。

海面上の氷山
海面下の氷塊が大きくなるにつれて、海面上の氷山は次第に大きくなってきます。

最近は、「ピック病の症状と治療」(フジメディカル出版)を読んでは、施設利用者の様子と照らし合わせてみることをくり返しています。もう、この本を何度読み返すことだか? 忘れっぽいということもありますが。だから、「発見」というのも度々あります。

書物というのは、その1冊にすべてが書かれている訳ではありませんから、更に理解を深める必要があればインターネット検索して知識を拡げていきます。インターネットがなかった時代には、関連する本を買って読んでいたのですから、ある意味でいい時代になったものです。

ただ気を付けておかないといけないのは、無数にある情報の中から信じてよいこと(信頼できること)なのか否かということを常に忘れないことです。どこもかしこも、「認知症には非薬物療法で対応しましょう」と書かれていることが多いのですが、それは極めて難しくてとても非効率的であり、現場の実情をあまり知らない机上の空論です。


コウノメソッド診断機器登場
2015年4月、「KMナビ」という、認知症を診断するソフトウェアが発売されました。これは、上に書いた「海面下の氷塊」=「診断経験」をプログラム化したものと例えていいのだろうと思います。画面に表示された情報(導きだされた診断)が「氷山」というわけです。
永年の経験に裏打ちだれた「匠の技」という職人芸の伝承というのは、どの分野でも必要不可欠な
ことです。特にコンピュータ化(自動化)というのはあらゆる分野で進められてきました。これを達成したからこそ、「技術立国・日本」の今日があるのです。

「匠の技」とか「職人芸」と称される技能・技術はどれも皆アナログなのですが、コンピュータは言うまでもなくデジタルです。でも、昔々はアナログコンピュータも実在していました。私が学生だった頃には、使われなくなったアナログコンピュータがホコリを被って研究室にころがっていました。

そういう昔話しはさておき、ここからは眠れぬ夜に私が空想したお話しです。空想を重ねるうちに妄想となり、やがては構想となり、東の空が白み始めました。こういう夜が3日続きましたので、名付けて「三夜物語」。



KMナビは、臨床現場で認知症診断に役立つソフトウェアであり、患者とその介護者の問診から得たデータを入力することで、CT画像を見なくても認知症の診断ができるツールなのです。

このKMナビ開発段階で話しをお聞きした時、診断に役立つのだろうと、漠然と思いました。入力したデータは、「診断時に役立つ、その場限りのデータ」という意味です。

ところが、ネットワーク、ビックデータ・・・と、拡がるデータの活用をあれこれと妄想、いや構想するうちに気付きました。 「J-ADNIだ!」

臨床研究ではアルツハイマー病の治療薬開発に欠かせない病気の進行過程を忠実に示す客観的な評価法の確立を目指しています。客観的評価法が定まれば、将来、アルツハイマー病の早期診断、予防、そして治療薬のスムーズな開発に繋がる非常に意義のある臨床研究となりますが、その客観的データを臨床現場から収集・解析するのがJ-ADNIなのです。

そこから、アルファベットで”J”の次は”K”ですから、K-ADNIだ! ピンとひらめいたのです。


Kono method - Advanced Diagnosis of Neurofibrillary Tangle and data Integration
(コウノメソッドー神経源線維変化の先進的診断とデータ集積) 

臨床現場での診断と治療におけるKMナビの活用は、今そこにいる認知症患者・家族にとってはとてもありがたいことなのですが、全国からデータを集積すると個々の端末では見えてこなかった新しい発見に繋がるのではないかと期待されます。以下、私の妄想的期待・・・
 ・ピック病の認知症に占める割合 (概ね15%前後だろうと、私の経験で推定しています)
 ・FG療法の効果持続期間 (FG療法:フェルガードとグルタチオンの組合せ治療のこと)
 ・CBD、PSPの発生頻度 (1万人に数人という推計に疑問があるから)
 ・エビデンスとはならなくても、「認知症は治せる」という膨大なバックデータ


町医者連合体のK-ADNIは即効性のある臨床現場型。認知症医療村のJ-ADNIは基礎研究型で将来の認知症根治を目指す(現在のところ、うまく進んでおらず、結果が出るのはいつのことになるのか分からない)。うん・・・、いいかもしれない。

【注記】これはあくまでも私がみた「三夜物語」(妄想、もしくは空想)です。



無責任な人々
前に「認知症医療村はどう責任を取るのか」と題して2回に亘って書いたのですが、これはある意味日常の介護現場からは遠い世界のことです。さてさて、身近なところに目を転じてみると、こういう無責任はいくらでもあるものです。

Hさん(94歳)はとても穏やかに暮らしているアルツハイマー型認知症(ATD)の人です。軽い脳梗塞もあり、最近入院して幸いにも施設に戻ってきました。それで以前よりもお世話するのに手が掛かるようになったのですが、施設で十分暮らしていけるレベルです。

ただ気になるのは、いつも「お願い、お願い」、「ありがとう、ありがとう」、「分からん、分からん」とソフトな声で叫んでいることです。ピック症状、レビー症状を思わせるような感じではありません。たぶん、元々からあるATDに脳梗塞の影響が加わってしまい、混合型認知症と言って差し支えない症状なのでしょう。

そうなると、服用してきたアリセプトの量を減らしてグラマリールを追加するなどして、症状に合わせた処方変更でまた以前のような穏やかな生活を取り戻せることも期待できます。同じことを1日中繰り返し言っているのは「陽性症状」なのですから、「抑制系薬剤」を使うことで抑えられるはずです。他にも、プレタール、プロルベイン(健康補助食品)という選択肢もあります。

こういうことは分かりきったことなので、看護師に言ってみたのですが、案の定理解されるでもなく、何にもすることなく放置されています。適切な認知症教育もない介護現場というのは、実に無責任なものです。

2015/04/11

認知症介護通信15/04/11

坂の上の坂

「坂の上の雲」ではありません。「坂の上の坂」です。詳しくは下の動画で。

情報処理力よりも、情報編集力」 これは名言だと思うのです。
日々、雑事に追われる中、「仕事は何のためにするのか」ということは忘れずにいたいものです。
介護の仕事は雑事だらけです。雑事にばかり気を奪われると、「何のために・・・」というベクトル(方向と力)が後ろ向きになってしまいます。
 


藤原さんのお話しを何度も繰り返して聴いたのですが、とてもいいお話しです。
単線型ではなく、複線型の人生。もう坂道を下っていくことしかないのだろうと思っていたのですが、まだまだ続く登り坂がいくつもあったのですね。




やはり教育は大切なのですね。特に「情報編集力」 これを習得したい。

2015/04/05

認知症医療村はどう責任を取るのか(2)

向精神薬が使えない明日 The Day After Tomorrow
向精神薬を使わないようにしましょう。それは、できればそれに越したことはありません。だからと言って、実際にほどんど使っていないか、使っているとしても処方が不適切であるとどうなるのか・・・

1日中、大きな声で奇声をあげる。突然、理由もなく怒りだして暴力をふる。入浴時に暴れて数人がかりで風呂に入れる。10分と経たないうちに何度もトイレに行きたがる。特に用事がある訳でもないのに呼び止める。隣の席の人のお膳に手を出す。ご飯やおかずを所構わず捨てる。夜、眠らずにウロウロする、大きな声を出す。食べ物以外のものを食べる。口をすぼめて食べない。このような人達を四六時中お世話する。


こういう困った現実を論文から読み取っているのでしょうか? 上記に挙げたことはごくありふれた介護現場で生じている実態のほんの一部なのです。(因みに、上記は前頭側頭型認知症(ピック病)、あるいはピック症候群の大変困った症状なのです。)

何の苦労するでもなく、認知症介護の現状を知るでもないであろう人達の「論文遊び」の末に出された結論(?)に、家庭介護者や施設介護者は翻弄されなければならないのでしょうか。
「介護力でなんとかしろ」だって。
インターネット社会とは言えども、まだまだ適切な治療をしてもらえる医師に辿り着けるとは限らないのです。
「認知症には適切なケアで対応しましょう」、こういう主旨の情報ばかりが氾濫しています。

向精神薬を使用しないように推奨したらどうなるのか。
それは例えば、日本各地の何処にでも在る、今日の荒れた老健や特養の実情を見れば分かることです。ですから、質的には、もう既に現実としてあるのです。数的には、今後増加の一途を辿ることは火を見るより明らかなことは言うまでもありません。

あまりクローズアップされることこそありませんが、上記のよな困った人達が、少しばかりの手助けを借りながらも施設で平穏に暮らしている人達の本来受けられるであろう介助の機会(時間的、心的)さえも奪うことになるのです。これは毎日のように生じている紛れもない事実です。

何だか推奨の決定要因が曖昧なのですが・・・

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 p.3より

■望ましい効果と望ましくない効果のバランスが不確実
これは当たり前のことで、すべての薬には望む効果(作用)も望まない作用(副作用)もあります。問題なのは、認知症の症状に合わせた適切な処方(種類と量)がなされていないことにあります。例えば、前頭側頭型認知症にアリセプトは効果がありませんし、抑肝散もセロクエルも同様です。レビー小体型認知症に規定通りのアリセプトは多過ぎます。こういう実例が混在した状況からは確実なデータは得られないでしょう。

■エビデンスの質が低い
「エビデンス」を拠り所とする論文でありながら、「エビデンスの質が低い」というのであればそもそも採用すること自体に問題があるのでは?
また、認知症治療に於いては、治療薬の効果を大規模に検証してエビデンスを得るのには不向きな性質の対象ではないでしょうか。

■患者の価値観や好みの不確実さ、あるいは相違
患者自身、あるいはその家族の価値観(即ち、認知症を治して欲しいという希望)と、「認知症は治らない病気」とする医者の間には、相違しかありません。「認知症は治せる」という希望(新しい価値観)を共有しない限り何の解決策は得られないでしょう。

■正味の利益がコストや資源に見合うかどうか不確実
古くからある薬は一般にその薬価が安いし、抗認知症はその数十倍も高くて、副作用も多々あるのですが、「資源」に介護力(マンパワー)は考慮されていないのでしょうか。

薬価が高い割に効果を現す確率が低い上に副作用もある抗認知症治療薬(アリセプト、レミニール、メマリー、リバスタッチ/イクセロンパッチだけが推奨されるとしたら、むしろ問題ではないでしょうか)。これらには増量規定があり、製薬会社が決めた用法用量通りに処方しなければならないことになっています。このこと自体が期待する効果に見合うだけのコストに値するかどうか不確実では?

以上、あたかも「揚げ足取り」のようなことを並べましたが、論文ベースの知見からだけで妥当性があるのでしょうか?


論文が認知症の真の実態を表しているとは限らない
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 p.4より

採択した論文から得られた結論というのが下表(認知症のみ掲載)の通り。

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 表より一部抜粋
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 表より一部抜粋
これをどう解釈すればよいのか。認知症のBPSDには抑肝散と抗認知症薬が最も推奨される?! 
そんなまさか・・・
4大認知症とされるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症の各タイプでBPSDは異なりますから推奨される薬物も自ずと違ってきます。
せめて、認知症個別に推奨(或いは中止)する薬物のリストでなければ真に役立つガイドラインとは言えません。

結局のところ、使ってもいいのですね!

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 「スタートとストップ」 p.3より
高齢者の「多剤併用の減少」は重要なことに間違いないでしょう。「医療費の抑制」も誰もが痛切に思っていることでしょう。良いことを書いています。

ところが・・・
 昔から使われてきた薬価の安い薬を使わない方がいい 

そして、
 薬価の高い、しかも深刻な副作用も多々ある抗認知症薬を使いましょう 

と言っているようなものなのです。
サマリーをよく読んでみると、認知症のBPSDにはアリセプトが効果的な薬物であり、向精神薬はどれも副作用ばかりで有効な薬物ではない」と主張しており、あたかも「認知症のBPSDを向精神薬で治療されては困る」という恣意的な結論になっているように感じるのです。
初版から10年の時を経て得られた知見から、これが結論なのでしょうか。もしそうであれば、稚拙過ぎます。

そして、最終的には・・・
 直接の担当医が判断すべきもの 

と申し添えているのですから、結局のところ・・・
ということなのですね!

実はこの「医者選び」が大変なのです。例えば、ショートステイでやって来る認知症患者はどなた様も手のかかる人達ばかり。調べてみると、誤診と不適切な処方ばかり。医師ではない素人の私がみても分かります。こういうお粗末な認知症医療は、根本的な対策を講じない限り超高齢社会を幸せにすることは到底できません。

ガイドラインに対する評価(批判)から少しばかり外れるのですが、各学会は総力をあげて認知症を治せる医師を増やすことこそが最重要課題ではありませんか。

「ガイドライン」は総論的な指針を示したものであり、高齢者医療の各診療科目の各論は別に存在するのでしょう。ただ、総論が不適切なことを論じるとすれば、各論はそれに影響されてしまいます。そういう意味でも、10年ぶりの改訂だという「高齢者の安全な薬物療法指針」は、真に役立つ有効な指針を示すガイドラインとなることを切に希望するものです。

あるブログでは、「認知症患者をほとんど診ない学者達が薬物療法ガイドラインなど出すなんてことはナンセンスである」とコメントされていたのですが、
私流に言えば、「最終的に責任を取る者」・・・ 
医者ではありません。認知症患者自身と、介護する家族や施設介護者なのです。

私の身近な親戚は、レビー小体型認知症でした。そこにアリセプトで食事を摂れなくなり、経鼻経管栄養。そして、医療機関のたらいまわしの果てに早過ぎる天寿まっとう。こういう責任の取り方はないでしょう。

最後に付け加えておきたい。
全国紙も全国ネットのテレビ局も、このくらいのことをきちんと報じていただきたい(色々としがらみはあるのでしょうが)。

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015案」が報じられた同じ41日、こんな報道もありました。「認知症医療村」・・・ 「原子力村」と似た存在なのだろうか・・・?
講演会で薬名繰り返す 講師の医師、製薬会社から謝礼 (詳しくはこちらを) 
医師に謝礼、1千万円超184人 製薬会社、講演料など (詳しくはこちらを)