2015/11/24

抗認知症薬の適量処方を実現する会 開催される

「抗認知症薬の適量処方を実現する会」設立総会が東京で開催されましたので行ってきました。
全国ネットのテレビ局はTBS、テレビ朝日、NHK。プレスは共同通信、その他。認知症急増が必至である今日の状況にしてはあまりにも少ない報道陣の数にがっかりしました。

STAP細胞論文ねつ造事件以上に重大なことなのに、少なすぎるメディアの注目度。我が国でかつて生じた薬害事件を遙かに凌ぐ規模であるにもかかわらず、一体何をしているのだろうか?

23日、専門医らが設立した団体によりますと、現在、国内で認知症の進行を抑える薬は4種類承認されていて、いずれも少量から始め、最大4倍程度まで増やすことが可能と規定されています。しかし、「適量に個人差があり、規定通りに投与すると患者が興奮したり怒りっぽくなるなどの副作用の恐れがある」ということです。団体は、全国の医師や患者家族から副作用とみられる実例を集め、来年の夏までに調査を取りまとめる予定です。


認知症治療薬の処方量、現場の声集め提言 医師ら新団体設立
次の記事は日本経済新聞より。これは、共同通信が配信元で報じた記事です。
高齢者医療に携わる医師らがつくった「抗認知症薬の適量処方を実現する会」(兵庫県尼崎市)が23日、東京都内で設立総会を開いた。代表の長尾和宏医師は、徐々に量を増やして使わなければならないという認知症の薬の規定について「規定通りだと症状が悪くなるケースがある。現場から情報を集めて調査研究し、提言していきたい」と述べた。
調査研究の結果を来年3月にも中間報告するという。総会では、薬を減らしたことで症状が良くなった患者の実例が動画で紹介された。増量によって怒りっぽくなるなどの副作用があり「製薬会社が副作用の実態を広く知らせていない」との訴えもあった。
認知症薬は4種類が承認されており、いずれも少量で始め、有効量まで増量するよう規定されている。同会によると、増量で副作用が出る場合、患者に合わせて処方量を減らす場合もあるが、診療報酬の審査で認められないことがある。〔共同〕


さすが! 報道のTBS




山東昭子参議院議員(自民党)も設立総会に名誉会長として出席。




一般社団法人「抗認知症薬の適量処方を実現する会」詳細はこちら→


2015/11/22

認知症問題は薬害問題でもある

認知症薬、審査に地域差 - 9県で少量投与認めず


認知症の進行を遅らせる抗認知症薬を規定の有効量を下回って少量投与した場合、過去3年間で全国の国民健康保険団体連合会(国保連)のうち9県が医療機関からの診療報酬支払い請求を認めない査定をしたことが、共同通信の調査で21日、分かった。
26都県では、認めない査定はなかったとし、12県が少量投与を認めるべきだとするなど、抗認知症薬の扱いに地域差があった。
 興奮などの副作用を避けるため少量投与した医師側が不利益を受けたとの指摘がある。個々の患者に適した認知症医療に向けた審査の在り方が課題となりそうだ。

11月21日、共同通信を配信元に、抗認知症薬(アリセプト、メマリー、レミニール、リバスタッチ/イクセロンパッチ)の増量規定問題がいよいよ本格的にクローズアップされてきました。上記は、マイナビより転記引用

現代書林 発行
現代書林 発行の認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?」って、実に長いタイトルの本ですが、「本当です!」

「認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいる」というのは、決して落語の話ではない。そんなおかしな話があるのが今の認知症医療の現状なのだ。
本書は今の認知症医療(診断と処方)が抱えるさまざまな問題点を、町医者(長尾)と介護ライター(東田)の立場から実証的に列挙し、改善するための方法論を提言している。

認知症には、「アルツハイマー型」「レビー小体型」「前頭側頭型」「脳血管性」の4大認知症があり、それぞれ症状も違えば処方も異なる。
これをあまり知らない医者や専門家が治療に当たっていることが認知症医療の第一の問題である。「病型」や「症状」を知らなければ誤診をする可能性は大いにあるし、処方を間違える場合もあるのは当然だ。
認知症と見れば、「とりあえずアルツハイマー」と診断する医者も少なくないというから恐ろしい。
認知症の症状は、脳の病変による認知機能そのものの中核症状(記憶・判断力障害など)と、中核症状に随伴し取り巻く周辺症状(徘徊、暴力・暴言、妄想など)の二重構造になっていることが特徴だ。
認知症治療の難しさは病型によって処方が異なることに加えて、中核症状への抗認知症薬の処方が、周辺症状の悪化につながる場合があることだ。ここでも、医者の「症状」の見極めと、薬剤処方の「さじ加減」が重要となる。

こうした認知症医療の現状を打開するために著者らが推奨するのが「コウノメソッド」だ。これは河野和彦医師が長年の認知症治療の中で「認知症患者さんから教えられた」患者と介護者本位の方法論で、①診断術、②処方術、③微調節、④優先順位、⑤公開性、に分けて解説している。
さらに、抗認知症薬の添付文書にある用法容量規定(増量規定)を、医者の処方の「さじ加減」を認めず認知症医療を誤らせる実質的な増量強制であると批判的に取り上げ、「一般社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会」(代表理事・長尾和宏)を設立した趣意と、今後の認知症医療に法人が果たすべき役割を宣言し、多くの医者が参加することを呼び掛けている。
上記は、現代書林ホームページより転記引用

こういう重大な事実がありながら、大手マスメディアは正面から報道しないのは何故?
認知症医療村の村人だから? NHKも、「NHKスペシャル『シリーズ認知症革命』」で、きちんと伝えて、まともな手立てを講じるように啓発しないと我が国は潰れてしまいますよ。受信料を払ってくれる人さえいなくなりますよ。

共同通信を配信元に、契約している地方紙では21日から一斉に報じ始めたけれど、これでいいのだろうか? 



一般社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会 設立総会が開かれる。ここにどのくらいのメディアが集まり、報道するのだろうか? ある意味、国家存亡の危機を回避するための試金石のひとつかもしれない。

  日時:平成27年11月23日(月・祝) 14時より17時45分
  会場:TKP東京駅日本橋カンファレンスセンター ホール4
     (情報交換会:ホール4B)
  対象者:記者・プレス関係者など 約50名~80



2015/11/12

転院直後の薬剤変更は行わない方がいいの?


「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015()に対するパブリックコメントに次のようなコメントが寄せられていたとのことです。(日本老年医学会 パブリックコメントのまとめと回答参照)
介護施設入所者に関し、転院直後の薬剤変更は行わない、と記載しておりました(CQ4)。これに関し、介護施設においても入所直後から薬剤変更を必要とする入所者が少なからずいる実体を考慮すべきとのご意見をいただきました。サマリー内での「転院」とは病院から介護施設への転院を指したつもりでしたが、説明が不足していました。医療施設間の正確な患者薬剤情報伝達を徹底することが真意なので、以下の「また患者にとって転院は環境の変化を伴うため、転院直後の薬剤変更は行わない」との文書を削除しました。(p.22)

現代書林 2015/12/03発行
 介護施設においても入所直後から薬剤変更を必要とする入所者が少なからずいる実体というのはごく普通のことで、むしろ、施設入所時に数日~数週間のうちに入所前に処方されていた薬剤のレビューを行って適正化を図る必要があるとさえ言わざるを得ないこともあるのです。診断名にさえ疑義を指摘したいこともあります。

即ち、
・症状(行動)をよく観察して、診断の妥当性を検証する
・処方されている薬剤の妥当性を検証する
・前医の治療が最適・最良であったと過信しない
ということです。但し、このような手続きは「絵に描いた餅」のようなことでもあり、介護施設で実際にこのようなことができるのかというと疑問です。

それでも、
認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか? 本当です! ということは知っておきたい事実です。



【事例】
ある入所者は、一目見て前頭側頭型認知症(FTD)と鑑別できる程なのですが、アルツハイマー型認知症(ATD)との診断でした。そして、ドネペジル(5mg)が処方されています。そのため、人格や品格が著しく荒廃していて、高齢者としての尊厳も何もないような状態にさせられています。FTDへのドネペジル投与は不適切ですし、そもそも適用はありません。

とても哀れなのは本人のみならず、面会にお出でになる家族です。多分、「回想法が認知症にいい」とでも聞いたのでしょう、古いアルバムを持参しては写真を見ながら、昔話をしています。

回想法を否定するつもりはありませんが、それ以前にやるべきことはドネペジル服用を中止することなのです。この中止ができないために介護負担が増えているばかりか、本来ならば回復の見込めるQOLを著しく低下させているのです。そして、家族が離ればなれに暮らさざるを得ない状況に陥れられているのです。

上記は先に挙げた、「介護施設においても入所直後から薬剤変更を必要とする入所者が少なからずいる実体を考慮すべき」という典型事例のひとつです。類似する事例は、施設入所者ではなく、ショートステイ利用者にもみることがしばしばあります。


「ただの介護職の分際が口出しするな!」という不文律

介護施設の理想!?
介護施設で上に挙げたような事例に気付きながらも、何も手出しのしようがないというのが実情です。実は、言うだけ無駄なのです。何故なら、施設というのは聞く耳を持たず、知識も持たず、「コトなかれ主義」の人だらけの集団だからです。

何年も前から言ってきてはいるのですが、さっぱり改善されないです。「ただの介護職の分際から口出しされたくなければ、アンタたち医療職が気付いて、言いなさい」なのです。更に突き詰めれば、「ちゃんと患者を診て、迷惑をかけない治療をしなさい!」ということです。

施設を選べば認知症は良くなる!






「施設を選べば認知症は良くなる」というのは絵空事ではないです。医療法人社団秀慈会ホームページから次の研究報告が公開されているのを見つけました。

   1回認知症治療研究会(東京)
   平成2731
   タイトル:BPSD治療における老健の存在-少量薬物療法を通して見えてきたもの-
   

認知症患者数は現在約400人と推定されており、それに伴って、家庭であれ、介護施設であれ、さらに一般病院であれ、BPSDを伴った患者の対応には非常に苦慮している。そこで当施設では、そのような困っている陽性BPSD患者を少しでも軽くし、本人のQOLの向上と家族及び介護現場の負担を軽減するために当老健施設の認知棟ショートステイ(SS)を使い少量薬物療法を試みBPSDを軽減させ、より多くの利用者がSS可能となるか検討した。これにより認知症まつわる諸問題の解決の一助となりえるか、さらに現在、急性期病院でのBPSD患者の「受け皿」施設としての可能性も検討したので報告する。
老健のみならず、特養も、有料老人ホームも、グループホームでも認知症の治療について感心を持ち、施設で総力を結集して適切な認知症治療に取り組むことが必要であり、この報告から明らかになっている解決策を実践してみる意義は大きいのです。

そして、これに続く別の報告では下記のように成果が記されています。

  1 職員全体が認知症についての医学的知識が増えスキルアップした
  2 二年前から認知症棟でバーンアウトによる退職者が出ていない
  3 家族の訪問が増え、認知症棟のイメージが変わり明るくなった
  4 少量薬物療法で患者のADLQOLが上がった
  5 患者・家族・職員から笑顔が溢れた




認知症医療・介護施設が見習うべき在り方というのは、こういう有効な方法を実践している施設であると思います。

2015/11/08

認知症患者への薬物使用の行方

ガイドラインは認知症高齢者とその介護者を救えるのか


適切な治療を受けることもなく、或いは漫然と投与され続けた薬のために介護負担が憎悪しているだけの入所者を哀れで気の毒と思う以上に、施設職員の方こそ哀れで気の毒に思えてしまうものです。

日中でさえ人手不足が深刻な介護現場では、夜間ともなると介護負担は更に深刻なのです。
つい先ほどトイレに行ったばかりなのに、またトイレに行きたがる。寝る前の薬はまだかとナースコールを鳴らし続ける。転倒リスクが高いにも拘わらず、ベッドから独りで起き出す。大きな声で騒ぐ、歌う。弄便する。毎日がこんなふうだと、言葉は悪いですが、「誰が産業廃棄物最終処分場にしたのか!?」とさえ言いたくもなるのです。

誰がした・・・
 ・認知症の陽性症状を抑える治療を求めない施設職員
 ・認知症を治せない医師
 ・治療に適切な情報提供できない看護師
 ・施設に入れておけば安心であると誤解や勘違いしている家族
数え上げればキリがない要因があります。

更には、少量の向精神薬でも使うことに偏見や誤解が潜んでいることもあります。だから、非薬物療法でなんとかしようと頑なになるのです。しかし、これは現実的には極めて厳しいのが実情です。世界的にみると、「認知症のBPSDには、非薬物療法を第一に」というのが趨勢となっています。

これに拍車をかけるが如く、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(案)が今年4月に提示され、その顛末が気になるところでした。

4月に公開された「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015() 

 認知症の周辺症状(BPSD)には、適切な薬剤の併用が必要なことが多いのです。
認知症の周辺症状(BPSD)は、「陽性症状」と「陰性症状」があり、介護者にとって迷惑で負担のかかるのが「陽性症状」です。
この陽性症状を少量の向精神薬で抑えることが、多くの場合必要となります。
中核症状を治療ターゲットにする抗認知症薬(アリセプト、レミニール、メマリー、リバスタッチ/イクセロンパッチ)だけが認知症に適合する薬剤ではなく、向精神薬もまた認知症の症状を抑えるために有用であることを認識しておく必要があります。
「神経病理学の研究が進めば進む程、複雑な病理の事実が明らかにされて来ている現状を見る時に、ドネペジルなどの薬剤だけに頼っても認知症の治療はうまくいかないことは明らかである」(認知症治療研究会会誌第2巻第1号、p.109)と記されているように、従来から使われ続けてきた古くて安価な薬剤の少量組合せ使用にこそ今日直面している認知症対策の鍵があるのです。



高価な新薬だけに依存する薬物療法には必ずしも期待する効果が得られるとは限らず、また医療費を高騰させる一因となっています。更に、介護費の高騰にも繋がっているのです。

深刻な事例では、抗認知症薬を服用して症状が悪化し、要介護度が増したということも生じており、医療費の無駄遣いと介護費の無駄遣いが多重化しているという実体もあるのです。

従って、家庭介護での限界から、介護施設の利用、更には特養入所希望者の増大となってしまうのです。「特養が足りない。ならば、特養を増やせ」という安易な発想しかできない行政は、少しばかり方向性が異なる施策を打ち出してきました。特養を増やせと言っても、財政的理由と人材不足の理由から、一朝一夕に増やせるものではありません。

このような厳しい現状に鑑み、ガイドライン(案)で推奨される指針には反対の意見を述べる必要があったのです。従って、パブリックコメントには認知症治療研究会からもコメントを送っていました。


ガイドラインはまともな認知症医療に導いてくれるか!?

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015完成の報告およびパブリックコメントへの回答が公開されました(日本老年医学会、2015年11月4日)。

本年4月に行いましたガイドライン(案)のパブリックコメント募集に対して、非常に多くのご意見をいただきありがとうございました。全部で158件(学会8件、研究会・団体2、医師85件、薬剤師6件、薬学部・薬理学教員3件、看護師1件、介護職8、製薬会社7件、登録販売者1件、一般37件)と多数のご意見をいただきました。
それぞれのご意見、ご指摘は大変貴重なものであり、本ガイドライン作成グループとして真摯に受け止め、どのように「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」をより良いものにしていくか慎重に検討を重ねて参りました。
それぞれのご意見、ご指摘は大変貴重なものであり、本ガイドライン作成グループとして真摯に受け止め、どのように「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」をより良いものにしていくか慎重に検討を重ねて参りました。その結果、薬物リストの名称などガイドラインの中心部分に変更を加えることとなり、それも受けた各論の修正及び再審議に長時間を要してしまいました。
(一部転記引用)

そして、ガイドライン本編では次のように記されています。
上記下線部は、コウノメソッド実践医による専門的治療への配慮だろうか? もしそうであるとすれば、幸いなことです。
パブリックコメントのまとめと回答」(PDF形式)では、p.3~5においてBPSDに関連する薬剤に関する記述の問題点を再検討した経緯をきちんと記述してあります。各方面から受けた指摘を真摯な姿勢で精査したようです。
雇えば、BPSDに抑肝散だけが有効であるかのような誤解を生じる記述は削除されています。先のガイドライン(案)では、抑肝散が認知症の陽性症状の何にでも効くかのように記されていましたがこれは不適切です。



ガイドラインはガイドラインとして「大枠」を提示しているだけであって、個別の領域に特化してはいないので直接の比較はできないのですが、認知症の治療は「コウノメソッド流 臨床認知症学」で詳細を見極めていただきたいものです。
特に専門的治療を受けている場合、リストに載っている薬剤も専門的見地に基づくことが多いことに留意いただきたいとされているのですから。
上の表中、「参考にしたガイドラインまたは文献」に、「コウノメソッド流 臨床認知症学」も加えておいた方がいいでしょう。




マスメディアは適切に後追い報道するのか


2015年4月1日、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(案)が発表され、その翌日にはマスメディア各社一斉に「向精神薬を中止すべき」という見出しの報道をしました。

「中止すべき」、即ち「ストップ(STOP)」なのですが、STOPではなくてSTOPP(Screening Tool of Older Person’s appropriate Prescriptions for Japanese)の意味でもあるようです。
マスメディアの報道では、分かり易くてセンセーショナルな見出しを記事に付けるのが常なのですが、誤解に基づく偏見や先入観を誘発することは避けていただきたいものです。


12月にはこのガイドラインが正式版として刊行されることになっているので、その際には誤解を生じることのないよう適切な報道に期待したい。

【参照URL

2015/11/01

臨床認知症学は面白い

こんな面白い学問は初めてだ

「コウノメソッド流 臨床認知症学」(日本医事新報社)の「序」で次のようなことが書かれています。
「こんなメッセージが書かれた医学書は読んだことがない」
「本の内容を忘れることができない」
「アンダーラインで真っ赤になってしまった」
「人生観が変わってしまった」
「後輩の医師にも勧めたくなった」



「こんなメッセージが書かれた医学書は読んだことがない」
医者ではない私は医学書は数冊しか読んだことがないのですが、それでもこんなメッセージ豊かな医学書は読んだことがありません。メッセージというのは下手をすると、筆者の独断的・独善的な意見として解釈されることにもなりますが、第三者の立場として冷静に現実に鑑みて納得するところが多いです。

「臨床」なのですから、それはまさに「介護現場」でもあります。「患者」を「施設利用者」に置き換え(読み替え)て、本書を読み進めると「たしかにその通りだ」と施設利用者からも教えられることと一致するのです。


「本の内容を忘れることができない」
年相応に記憶力が衰えてきているので忘れます。でも、「どこに何が書かれていたか」ということは忘れませんから、読み進めてはまた戻って読み直して・・・の繰り返しです。それで、「ああ、そうだったね」と思い出しますから、忘れられないのでしょう。


「アンダーラインで真っ赤になってしまった」
はじめからアンダーラインを引くのはもったいないので、2回目以降の精読でアンダーラインを引くつもりなのですが、たしかにラインマーカーペンが何本あっても足りそうにないくらいの内容です。


「人生観が変わってしまった」
別の意味、「人生が変わってしまった」というのは、認知症患者自身、あるいはその家族にもこの本による恩恵を享受していただきたい。
つまり、
 ・これまで不適切な治療を受けていたけれど、コウノメソッドで救われた。
 ・認知症は治らないとあきらめていたけれど、コウノメソッドで救われた。
ということです。

更には、この本がきっかけということではないのですが、コウノメソッドによって介護を生業とする人生が変わったということが私の場合には明言できるのです、
ひとつには、認知症のことを深く理解できるようになったこと。そのことで、不適切な治療を見抜くだけの鑑別能力が身に付いたことです。


単に介護施設で働いて生活の糧を得るだけに留まらず、我が国の認知症医療に正面から直接的にもの申す機会を得たことです。これは何か特別な努力を重ねて獲得したのではなく、まったくの幸運によるものです。


「後輩の医師にも勧めたくなった」
私には後輩にも先輩にも医師はおりませんが、是非とも医師の方々に読んで欲しいですし、実践していただきたいです。岩田医師(コウノメソッド実践医、長久手南クリニック院長)は著書「認知症になったら真っ先に読む本」(現代書林)で、「コウノメソッドに準じた治療はインスタント味噌汁のパックを切って、お碗に入れ、熱湯を注ぐだけで、何十年も熟成された味噌の風味が味わえるのと同じです」(p.149150)と記しています。


「コウノメソッド流 臨床認知症学」は、コウノメソッドを知らずに初めて読むには難しいところもあるでしょう。既刊の「コウノメソッドでみる認知症診療」、「コウノメソッドでみる認知症処方セレクション」、「コウノメソッドでみる認知症診療Q&A」 (左記はいずれも日本医事新報社刊)、「ピック病の症状と治療」、「レビー小体型認知症」(左記はいずれもフジメディカル出版刊)を読んでいても、分厚い「コウノメソッド流 臨床認知症学」を読み進めるのに時間がかかります (多分、私のアタマが悪いからでしょう)

コウノメソッド初心者は、「コウノメソッド流 臨床認知症学」を要約したようにも位置付けられる「コウノメソッドでみる認知症診療」をよく読んで、認知症診療の全体像を俯瞰(理解)してから、「コウノメソッド流 臨床認知症学」に入るのが理解の最短コースなのかもしれません。

ただ、それでも絶対必要不可欠なことがあります。それは、認知症患者自身から、あるいはその介護者から謙虚な姿勢で話しをよく聴くということです。「年のせいだから」とか、「素人が口出しするな!」などという考えを持たないこともまた大切なことです。

極めてシンプルな例え話し、
「あなたは、患者の排便が滞っている情報を得ないで、下剤を処方できますか?!」
ということです。