2016/12/23

認知症治療は何故うまく行かないのか





認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」には次のように記されている。
認知症の人に行動・心理症状(BPSD)や身体合併症等が見られた場合にも、医療機関・介護施設等で適切な治療やリハビリテーションが実施されるとともに、当該医療機関・介護施設等での対応 が固定化されないように、退院・退所後もそのときの容態にもっと もふさわしい場所で適切なサービスが提供される循環型の仕組みを 構築する。その際、入院・外来による認知症の専門医療も循環型の 仕組みの一環であるとの認識の下、その機能分化を図りながら、医 療・介護の役割分担と連携を進める。 認知症を含む精神疾患は、医療計画に位置づけられていることを踏 まえ、都道府県は地域における医療提供体制の整備を進めることとする。
現実はどうであろうか? 甚だ疑問である。だから言いたいー


 3回認知症治療研究会
開催日  :平成29 2 26日(日)
開催地  :神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
会 場  :パシフィコ横浜 会議センター1F メインホール
定 員  :300名(定員になり次第締め切りとさせて頂きます)
参加費  :2,500


気が付けば師走。今年も残すところあとわずか。年間50件程度のブログ更新をと思ってきたのですが、目標達成ならず・・・ サボっていた訳ではなく、着々と認知症セミナーの準備を進めていたりする。
今年のブログ更新はこれでおしまいです。では、よい年をお迎えください。

2016/12/10

新オレンジプランを読んで

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

厚生労働省が打ち出した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を読んだ(詳しくはこちら→)。厚労省のお役人、有識者のエライ先生方が知恵と打算と誤算を交えて作ったのだから、「総論、ごもっとも。各論、なんかヘンだぞ」というのが率直な感想です。



認知症の発症予防は何より大切です。アルツハイマー型認知症(ATD)の場合、潜伏期間が20年ほどあるとされており、各タイプの認知症のうちで相対的には最も研究が進んでいます。だからなのかも知れませんが、その知名度も手伝ってか、何でもかんでもATDと診断されてしまっていることがあります。

初診ではATDが妥当であったとしても、そのうち前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)と診断名を変えた方が妥当であることもあります。当然、症状が違うのですから処方される薬も変わってきます。ところが現実は診断はATDのままで、ドネペジルが漫然と処方され続けている事例もあります。

施設の場合、情報提供書に記された診断名と、実際に見る症状が大きく異なっていることに気付くことがあります。ある入所者はグループホームで暮らしていたのですが、介護しきれなくなって、当施設に移り変わりました。暫く様子を見ているうちに、「ああ、これはピックだね!」と分かりました。一般に、前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)の場合、グループホームでの生活は難しいです。他の入所者の迷惑になりますし、施設スタッフの介護負担を増大させるからです。

これが、「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護の提供」という目標と現実の乖離です。まったく機能していないのです。こういう事例は少しばかりの知識があれば気付くことができます。



医療連携という名の虚構
施設の場合、連携医療機関として幾つかの病院や診療所が掲げられています。「施設入所者に何かあったら、この病院に連れて行きます」あるいは「往診してもらいます」という仕組みです。医療機関をただ並べておけば、認知症以外の疾患であれば機能するでしょう。ところが、同じような認識でいると、認知症は「医療機関に丸投げ」では期待する治療成果は得られません。


「医療機関に丸投げ」というのよくあることです。出された薬を漫然と飲ませ続ける、寝たきりの全介助の状態になっていても抗認知症薬を飲ませ続ける。症状を見て、「この向精神薬はいらないよね」と気付いていても飲ませ続ける。こういったまったくの無駄なことがくり返されているのです。

その結果、どうなるのか? 介護負担の憎悪です。これは結局のところ、介護費の増大につながります。勿論、医療費の無駄遣いでもあります。
2年毎の診療報酬改定と、3年毎の介護報酬改訂の時期が重なる2018年、大きな変革が求められるだろうと予測されています。
医療・介護現場としてどうすればいいのか? 上図の上段にあるような医療と介護をただ並べただけのシステムでは有効な機能を果たすことはできません。上図の下段にあるように、医療と介護の「接合領域」の機能をしっかりと組織化・システム化させるのです。

このシステム化を一番構築しやすいのが老健だろうとみています。その次が特養です。実際には、制度・法律上の違いはあっても、これらに暮らす入所者の容態は同じようなものです。つまり、制度・法律上の区分けには実質的に意味がないのです。唯一明確なのは、「特養では最期まで暮らすことができる」ということです。

2025年までは高齢者は増加します。ある意味、これらの施設への入所需要は増えますから、ただ待っていれば「顧客」の方からやって来ます。ところが、それ以降は高齢者は減少に転じますから、いくらかは買い手市場となり、「安かろう悪かろう」は通用せず、優秀で評判の良い施設だけが生き残れる時代になるだろうと思います。

優秀で評判の良い施設というのは、何も入所希望の本人や家族に限ったことではありません。そこで働く介護・看護職にも影響します。評判の良い職場で働きたいと思うのは当然のことです。そもそも、モチベーションが違います。

分かり易く表すと、
[入所者の質]×[介護・看護職員の質][施設の質]
ということになります。


2016/11/14

ナラティブの集積がエビデンスを超える

認知症治療研究会会誌(第3巻第1号)が届きました。 「発刊の言葉」にある。「近年、エビデンスという言葉が臨床医を支配するようになってきた。エビデンスとは集団統計上有意に効果があることが研究対象薬剤に証明され、その統計処理の正当性を審査され論文化、発表されたことを意味することが多い」

たしかにエビデンスは重要である。「○○が△△に効果がある」と言われ、「科学的に効果が証明されている」という’お墨付き’があれば安心するし、処方された薬を信用してを飲む。ことろが、そのエビデンスなる存在が、製薬会社主導の下、製薬会社の利益に資するようにねじ曲げられた偽りの産物であるとしたらどうなるか? (だから私は、出された’あの製薬会社’の降圧剤をまじめに飲んでいない)

エビデンスよりナラティブ
エビデンス信奉者、製薬会社御用達学者には見向きもされないかもしれないこの会誌、今回は「歩行障害系認知症」とサブタイトルが施されています。

実は歩行障害をコウノメソッドで提唱する治療で、歩けない人が歩けるようになると困るのではないか?と心配していました。見守りの必要性が増すからです。不用意に立たれ、無目的に歩き回り、その挙げ句、転倒して骨折する。施設介護者はこういう事故を恐れるのです。

症例報告として、「抗パーキンソン病薬の危険分散で妄想をあっかさせずに車椅子生活から歩行可能となったLPCの1例」(松野先生、千葉県)が掲載されています(p.72~73)。 

治療戦略を綿密に立てるとして、「治していく順番は大切である。先ず、覚醒させる。次に周辺症状の陽証を整理する。『介護者保護主義』の観点から陽証の治療を優先する。それから歩行障害を治療する」とされています(「」内の引用は一部改変。詳しくは本誌をご参照ください)。

こういう手順であれば、「不用意に立たれ、無目的に歩き回り、その挙げ句、転倒して骨折する」ということは杞憂となるかもしれません
さて、こういう症例報告をいくら集積したところで、「エビデンスがある」とはならないです。仮に他の学会からは評価されないであろう治療方法であっても、介護する家族や施設介護者に評価されればいいのです。

サーフィンアレンジは地域包括ケアシステムの要
「公募論文」では、「訪問診療でのサーフィンアレンジの重要性」と題して宮城先生(沖縄県)の事例が掲載されています。
これを拝読した時、ちょうどこのブログに出そうと思っていた「漠然とした思い」が「確信」となりました(左図参照)。

診療報酬と介護報酬のダブル改訂が実施される2018年、「地域包括ケアシステム」の構築に拍車がかかる変革の年とされています(日経ヘルスケア)。

「地域包括ケアシステムにおけるかかりつけ医の役割」(日本医学ジャーナリスト協会総会での特別講演を読んでいた時、コウノメソッドの採用可否がこれからの医療・介護のターニングポイントとなるのだろうと思いました。(こちらもご参照ください→)



4文字でピンと来た進行性核上性麻痺症候群(PSPS)

 「この人、レビー小体型認知症(DLB)だけでは説明がつかないよね・・・」そう思ってお世話してきた施設入所者はいつも目を閉じています。「目を開けてください」と声をかけると、目を開けるような動きを見せますが、しっかりと明けることはありません。何も知らない介護職も看護師も「傾眠」として認識しています。

入所当時は目を開けていることが多かったですし、目を閉じていても声をかけると目を開けます。四肢に鉛管様筋固宿があり、時々幻覚(幻視)があり床に落ちたと思っている物を拾おうとする行為がみられます。近隣の総合病院でDLDと診断され、ガランタミンが処方されています。
それでも、最近の様子を介護を通じてよく観察していると、「おかしい。DLBだけでは説明しきれない何かがある・・・」と、思っていました。

歩行障害系認知症特集として、「当院で経験した進行性核上性麻痺症候群(PSPS)の50例に関する臨床検討」(中坂先生、神奈川県)が掲載されています。先生の指摘するように、大脳皮質基底核変性症候群(CBS)も進行性核上性麻痺症候群(PSPS)も決して稀な病気ではないことは、介護現場に居ても分かります。

上記のDLBだけでは説明の付かない入所者には、「開眼困難(開眼機能不全)」があるのです。ここでは記載を省略しますが、あたかもパズルを解くかのように症状を拾い、つなぎ合わせて考えると、DLBではなく、PSPSであると鑑別した方がよさそうです。この「開眼困難」でピンと来ました。
この開眼困難については、「開眼失行と眼瞼痙攣はジストニアの一種」と題して、中坂先生のブログに掲載されています。(詳しくはこちら→)

甚だ僭越ではございますが・・・ 
このように、ある文章を丹念によく読んで、介護現場で施設入所者をよく観察していると、色々なことを教えて下さるものです。本当に身に付く知識というのはこういう「ピンと来た!」と思うことの積み重ねによるものです。これについては、「座談会 認知症医療と介護を学ぶ」(p.78~81)に掲載されています。 
p.79の上段の写真のオッサンがこのブログを書いています。2017年2月26日、パシフィコ横浜で、「この顔にピンと来たら」、気軽にお声をおかけください。

2016/10/25

医療界のキーパーソンに聞いてみよう

認知症の困った症状は、「問題行動」と呼ばれていましたが、現在はBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:行動・心理症状)が一般に用いられるようになっています。但し、この行動・心理症状は認知症そのものに起因すると思われがちですが、診断とそれに基づく投薬によって生じることもあります。


「怒りっぽくなった」というのが、実は処方された薬のせいということもあります。また、食べられなくなって寝たきりになってしまったということが薬のせいということもあります。
「年だから」とか、「認知症が進行したから」という理由だけでは片づけられないこともあるのです。

即ち、BPSD3(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia by Diagnosis and Drug)というわけです。Diagnosisは「診断」なのですが、「鑑別・見立て」でもいいでしょう。認知症は初期にはアルツハイマー型認知症(ATD)だと診断されていても、進行するにつれてピック病(前頭側頭型認知症、FTD)と診断名を変えて適切に治療薬を調整した方が良い場合もあります。初期の診断名に拘らないことも大切なのです。
だから、「診断」というよりは、「鑑別・見立て」なのですが、この「鑑別・見立て」は医師ではなく介護者もしっかりとできるようになりたいものです。翻って、これができていない事例が後を絶ちません。

「認知症はなぜなかなか良くならないのか、私たちは認知症に対して何ができるのか」 この命題に対するひとつの答えは、従前からある「BPSD」にDiagnosis Drug を加えて「BPSD3」として対処する力を身につければよいのです。

詳しくはこちら→

このセミナーでは、講師として長尾先生がご登場される。一般向けの著書(詳しくはこちら→)も多数執筆されていますが、セミナーに参加して直接お話しを聴いて学ぶのが一番いい学び方です。
長尾先生のお話しはこんな感じ・・・ 



オレンジプランと現実の乖離
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~ と称して下図のような考え方が提示されています。. (詳しくはこちら→) 現実問題として、まだまだ道程は前途多難と実感させられます。
ショートステイ利用者の様子を見ていますと、認知症の治療をすればいいのに未治療であったり、薬が合っていないと思われる症例に気付くことがあります。中には未治療であるため、「もう2度と来ないで欲しい」と思うこともあります。

あるショートステイ利用者はアルツハイマー型認知症(ATD)なのですが、じっとして居られず、昼夜の別なく徘徊します。目的もなく入居者の部屋に入って行く、寝ている人を起こすなどの迷惑行為があります。注意すれば屁理屈を並べる、反省もない、といったことの繰り返しです。

最近、このショートステイ利用者は姿を見せなくなりました。介護負担が多いため、利用お断りとなったのです。残念であり、(家族にとっては特に)気の毒でもあるのですが、施設という集団生活に適合できなければ、介護サービスさえ満足に利用できなくなるのです。
受け入れ側にしてみれば、ただでさえ人材不足の中、「厄介」を請け負うだけの余力はもうないのです。一方、余力がないながらも、定期的な利用が可能な要介護者というのは「手のかからない人」ということになります。つまり、認知症であっても、おとなしく集団生活に適応できる中間証であることです。

「迷惑の移譲・たらい回し」しかできないような介護事業所には、地域包括システムの一翼を担う資格はなく、2018年の診療報酬と介護報酬のダブル改訂が実施される厳しい時代を勝ち抜く能力はない。


2016/10/12

無駄と無理を生み出す無理解

「平和、平和!」と叫んでいても、決して平和な国際社会は実現しません。残念ながら、これが厳しい世界情勢です。我が国の憲法問題(特に第9条)には、やはりしっかりと関心を寄せておくことが必要不可欠です。


それはさておき、医療費は防衛費のおよそ8倍にも膨れあがっているなんてこと、知りませんでした。両者を比べること自体に何の意味もないことではありますが、少なくて済むものなら減らしたいとは誰でも考えることでしょう。
 防衛費は国民一人ひとりの削減努力という行動でどうにかなるという訳にはいきません。一方、医療費は被保険者である国民の小さな行動でいくらかは削減に貢献できるものです。
そのひとつが、認知症医療について正しい知識を持つ、つまり「知識武装」することであろうと思います。

残念ながら、認知症医療は医者の言うままに出された薬を飲んでいても、期待した効果が得られるとは限りません。むしろ、症状が悪化して介護負担が増えてしまったとか、要介護度が上がって介護費用の負担が増えてしまったという顛末を辿る事例が後を絶たないのです。


だからこういうセミナーで正しい知識を身につけたい。

  実践的認知症セミナー
   演題:増加する認知症 -最新予防法と薬に関する怖い話-
   日時:20161111日(金)午後530分~午後730
   場所:ホテル青森(JR青森駅より市営バス乗車 国道4号線文化会館前下車徒歩3分)
   講師:長尾和宏先生(長尾クリニック 院長)

   参加費:1,000
(詳しくはこちら→)
講師は長尾先生。多数の著書を執筆されており、在宅医療・終末医療のエキスパートです。 著書はこちらを参照→ブログはこちらを参照→


 ・・・ 同様に、医師の質の向上は介護スタッフの負担軽減になる


2016/10/01

かしこい被保険者になろう



当然、介護現場も! きわめて深刻です。


だから公共放送でもキャンペーンしているのですが、エライ先生の啓蒙活動が必ずしも正しいとは限らないです。
エライ先生の話しはこちら→

医療費には薬代も含まれます。ということは、製薬会社の売上げでもあります。その売上げのなかからこういうお金(詳しくはこちら→)が流れて、結局のところ医療費をいたずらに増やす結果になっているとしたら・・・
それに、新薬を売るためのデータねつ造(詳しくはこちら→)が行われているとしたら・・・

だから、こういうセミナーでしっかりと知識武装しておきたい。


2016/09/24

かしこい介護者になろう

柔軟な発想で考えよう

なんだかよく分からない暗号のような数字があるという。128e980 なんだろうこれ?
128×√e×980を計算すると、何か意味のある数字が出て来るのだろうか?

日常生活では馴染みのない数字ですが、
e = 2.718281828459045・・・・
という数字定数があります。
超越数で、「フナヒトハシフタハシヒトハシフタハシシゴクオイシイ;鮒、一箸二箸、一箸二箸、至極美味しい」と覚えます。

手許に電卓がないので計算するのはやめて答えを見た。128e980の上半分を消すと、「I Love you」だと。文法としては、「Love」ではなくて「love]なのだけど、まあいいか。柔軟な思考力のない自分に笑った。


認知症医療は捨てたもんじゃない

高齢者にとって薬はどれも毒です。その毒のせいで絶望に追いやられるのではなく、賢く使って希望に変えていく能力を身につけなければなりません。薬は上手く使ってこそ薬であり、下手に使えばどんなに優れた薬でも毒。
「医者と薬は使いよう」賢くならないと、とてもではありませんが高齢者介護は難しいのです。

この講演では漠然としたきれいごとを語ってはいません。臨床に立ち、実際に認知症治療に携わっている経験から語っています。その中で、「これはおかしいよネ!」って疑問に思われることを具体的に説明しています。

この説明を通じて分かることは、不都合な真実には目を向けず、ある特定の既得権(認知症医療ムラの利益関係)に配慮したが故に生じる理論展開の矛盾が露呈しているということです。

詳しくは動画をご覧いただくとして、指摘の対象となっている実例を以下にあげておきます。

指摘1:認知症治療薬の副作用はそれだけですか?
一般に認知症治療薬(アリセプト、メマリー、レミニール、リバスタッチ、イクセロンパッチ)の副作用は、吐き気、下痢、目眩、眠気などとされています。これらには当然、個人差はありますが、易怒や興奮もまた生じることがあります。人によっては、怒りっぽくなって介護者を困らせる状態を生み出すこともあります。

この副作用の出現は極めて重大です。
分かり易いハナシ、要介護2の人が易怒や興奮のため手に負えなくなって要介護3になってしまった、ということが生じるのです。薬で要介護度を上げておきながら、その手当()として、介護費用を増すというのです。問題は費用増にとどまらず、介護者の負担も増加させてしまうのです。まったく無駄な医療費と介護費であり、理にかなわないことが公然と報じられているのです。

指摘2:不都合な真実を隠す方便は理論的に破綻する
専門医として認知症治療に携わっている医師による記事がある医療系雑誌に掲載されています。これは厚労省による通達(骨子は抗認知症薬の適量処方を認める)を受けての意見です(下図23番目に一部を図示)

この記事での理論展開は筋が通らず、矛盾があります。このことは先に紹介した動画をご覧ください。動画の中では露骨に言っていませんが、「製薬会社との関係を配慮するとホントのことは書けないです。私(記事投稿の医師)もその学会の役員ですし・・・」ということは認識しておかなければなりません。



「患者さんに合わせた用量設定は基本的には賛成」・・・たしかにその通りです。誰が考えても同じことを言うでしょう。しかし・・・



「この通達が悪用される可能性を憂慮」・・・悪用しているのは製薬会社。それに加担している学会、大学のエライ先生方でしょ! しかし・・・





患者・介護者に迷惑をかけない治療

認知症治療は中核症状である記憶機能の障害を改善することよりも、周辺症状を極力抑える治療が望まれます。人は年を取れば呆けてくるのは当たり前のことです。その呆けよりも、人が人らしく人生をまっとうするために必要な能力の維持にこそ治療の意味があるのです。



かしこい認知症介護者になろう

実践的認知症セミナーのお知らせ(詳しくはこちら→)
実践的認知症セミナーのお知らせ(詳しくはこちら→)



24時間経過後の傷
指を切ったら痛かった
調理中に左人差し指を深く切った。血が止まるまで約15時間。

圧迫止血さえも満足にできない自分にがっかり! 何も知らないことを知った。「病院に行って縫ってもらうレベルです!」と聞かされて驚いた。

2016/09/17

実践的な認知症治療は町医者に学ぼう

統計的有意が真実とは限らない

千差万別、十人十色の多彩な症状を呈する認知症には、統計で導き出された抗認知症薬の適量(?)が著効を示すとは限りません。患者個々の体質、体格、症状に応じた適量が最適なのです。



認知症の中核症状より周辺症状を治療標的にせよ

「認知症」=「記憶障害」 だから、中核障害の改善・進行抑制を狙った治療をすればいい?! こんな単純な思い込みで認知症は治せません。むしろ、介護上で困る周辺症状を抑える治療が大切です。
その勘どころ(コツ)は、下図の一番下の階層、即ち認知症患者の実際に一番近いところで認知症を診ている町医者が見つけ出すものです。




大半のメディアは認知症治療の本質を伝えない

NHKの認知症啓発番組や民放の情報番組で、認知症とその実践的な治療方法について報じることはほとんどありません。理由はいくつかあるのですが、主な理由は次の2点でしょう。
 理由1 スポンサー企業との関係を配慮する
 理由2 権威(製薬会社御用達学者)に弱い


かしこい認知症介護者になろう

「患者の持つ情報量が医師の持つ情報量を上回る時代である」(A. Muir Gray)
認知症医療過誤に巻き込まれないために、認知症介護者(家族・施設スタッフ)はかしこくなりましょう。認知症は診察室だけで治療(診断と投薬の種類と量)が完結するタイプの疾患ではありません。

介護者がどれだけしっかりと関わり合い、治療に関与できるかが重要です。医者が判断したこと、言ったことがすべて正しいとは限らないのです。医者がエビデンスを論拠にして一方的に治療について何かを言ったとしても、ナラティブを無視したやり方では期待する効果を得ることはできません。

だから、こういうセミナーで、実践的な認知症治療にあたっている医師から直接教えてもらって知識を習得するのが一番です。(詳しくはこちら→)




2016/09/09

第一印象は重視せよ


この症例は「CBS(大脳皮質基底核変性症候群)と気付くのに遅れました。但し、気付くと言っても推定でしかありませんが。
何故気付くのが遅れたかというと、図中の右のように、右腕を前方/上方に真っ直ぐ伸ばしたままで、左腕は曲げたままだからです。左側のように、腕を下ろした状態であればピンと来るのがもっと早かったかもしれません。第一印象=先入観を専らの認知症鑑別の主軸に置きながら、ちょっとした姿勢の違いに惑わされた実に初歩的なミス(思い込み)です。

現在の症状
この症例では以下の
・無言、無動(寝たきりにならないように、離床している)
・コミュニケーションなし(声かけにゆっくりと視線を動かす程度)
・四肢の鉛管様筋固宿(左上肢が特に顕著)
・嚥下障害(介助にて経口摂取可能)
・眼球運動麻痺(常時一点凝視、時々左右に動かす)

もはやこうなると、CBS末期で手の打ちようがないのですが、この状態になるまで78年経過しているようです。初期は、神経内科でアルツハイマー型認知症(ATD)と診断されていました。のちにデイケアを利用して、その後老健に2年間ほど居ました。この間に複数の医師と、多数の看護・介護スタッフの介在があったのに、相も変わらず、「初診がすべて」のようで、途中経過から診断が変わることがなかったようです。


CBSの初期にはATDと似た症状もあることから、ATDと間違えられることも指摘されていますが、症状が進行してもATDでは図のような姿勢にはならないです。症状の進行によってATDではなく、CBSだと分かったとしても有効な治療方法はないのが現実ですが、やはり適切な診断(鑑別)は必要でしょう。

「これがATDの末期なのだ」という誤った認識を持つことになりますし、医師のみならず看護師、介護士の知識向上にならないからです。認知症の初期では典型症状が出揃うことは少なく、どのタイプの認知症であるのか混沌としているものです。進行するに従って症状が出揃い、鑑別精度が上がってきます。この変化を継続的に観察することが重要です。ATDがずっとATDのまま、DLBがずっとDLBのままであるとは限らないのです。

残された希望
この症例でとても気の毒なのは、頻繁に面会に来る家族です。ATDではなくCBSとは知らず、面会の都度、持参した果物を食べさせ、四肢の固宿が進まないよう他動運動しているのです。
CBSPSPSも国指定の難病で治療方法はないとされ、ガイドラインではリハビリだけが唯一の対症療法とされています。

しかし、最近では、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチ)、グルタチオン、フェルラ酸(フェルガード)という選択肢が登場しているのですから、これらの併用を試みない手はないです。これらに期待するのは、声かけに反応すること、嚥下機能をこれ以上悪化させないこと(胃瘻造設の回避)です。どれだけの効果があるかは試してみなければ分からないのですが、何も手を尽くさないということが納得できないです。


2016/09/01

認知症は診療の邪魔?

認知症+褥瘡で入院、そして胃瘻造設となった症例


Fさん(80歳後半)は糖尿病です。褥瘡治療のため3ヶ月間の入院を経て経口摂取ができなくなり、入院中に胃瘻造設となりました。糖尿病があると、骨折では骨がつながりにくい、傷は塞がりにくいくらいのことは知っていますが、褥瘡治療の入院で胃瘻とは・・・
もしかしたら、認知症とドネペジルに起因する嚥下障害なのでは? 不審に思ったので解析してみました。

生活状況・症状
・歩き方は、ややワイドベースで足が上がらず摺り足歩行の前傾姿勢。転倒防止のため両手引き歩行。
 (正常圧水頭症(NPH)の症状かもしれない)
・甘い物好きで、面会時には必ずお菓子類を食べていた。
 (元々甘いモノ好きだったようです。家族が糖尿病の親に持ってくること自体が不適切)
・トイレに頻繁に行きたがる。すぐに対応できず、待つように言うと逆上して屁理屈を言う。
 (極めて理路整然としたことを言う。アルツハイマー型認知症(ATD)の言い分とは考えにくい)
・失禁なし。
 (前頭葉はまだそれほど萎縮していないのか)
・自分の思うようにならないと怒り出す。
 (ピックぽくもあるけれど、ただの癇癪か)
・時々、辻褄の合わないことを言う、妄想あり。
 (次第に頻度は増していたが、対応に困る程でもない)
・どことなく、唖然、呆然とした表情。
 (レビーの意識障害にも思える)
・会話は普通に成立する。(語義失語なし、非流暢性なし)
 (どこにでも居るようなおばあちゃんと同じ)
・近時記憶は正常範囲内。著明な記憶障害があるとは思えない。
 (「ご飯食べましたか?」と尋ねると、いつも正解を答える)
・ドネペジル(アリセプト)5mgを服用している。
 (どこの医者が出したか!)

以上のような「状況証拠」から推定されること
・正常圧水頭症(NPH)による認知症(治療可能な認知症のひとつ) 
 但し、失禁がないので、NPHの診断基準を満たさない。
・前頭側頭型認知症(FTD)
・レビー小体型認知症(DLB)
・レビー・ピックコンプレックス(LPC)

胃瘻造設の前にするべきだったこと
DLBまたはLPCの可能性は否定できないと思われます。ドネペジル(アリセプト)の服用を中止して、嚥下機能の回復を目的とするリハビリを実施する。何故なら、嚥下機能の障害はDLBに生じることがあります。だから、DLBにドネペジルが入ると嚥下障害はさらに酷くなることがあります。

歳を取って多重する疾患を抱えた高齢者で、なおかつ認知症が加わるともう終わりなのでしょうか。チーム医療はただの絵空事となります。医師にとって内科は基本中の基本であるように、その中に認知症も基本として組み入れないと高齢者医療は太刀打ちできそうもないです。

そもそも、この症例では入院時に糖尿病治療薬や抗認知症薬などが持ち込まれていました。加えて、褥瘡治療のため薬が追加されたのです。他の医療機関、あるいは主治医の専門外の薬剤については、医師と言えどもなかなか手を出せない(服用をやめさせること)ようです。

また、入院前、ドネペジルが処方されていたことから、ATDと診断されていたのでしょう。この時、歩き方からNPHを疑ってみなかったのかということも疑問です。(初診時よりずっと後になって、NPHを疑わせる歩行が生じたのか?)






「医療連携」ならぬ、「胃瘻連携」が後を絶たないです。・・・・・あの病院!
転ばないように介助してきたこと、褥瘡の原因となる低栄養状態にならないように栄養管理してきたこと、褥瘡が悪化しないように定期的に体位交換してきたこと・・・・、全部水の泡。
「褥瘡を生じさせるのは施設の恥!」と当該施設は考えているらしく、その予防には神経を使っています。それはそれで結構なことですが、認知症を悪化させないことにはまったくの無頓着というのは、今の時代にはいかがなことかと思う。

退院して、幸いにも施設に戻って来ることができました。臥床しているFさんに声をかけてみましたが、目を閉じたままで反応がありません。何度か声をかけると目を開けましたが、虚ろな目で呆然としており意識障害があるようでした。両方の腕を曲げ伸ばししてみると、鉛管様筋固宿がありました。翌日にも同じことを試みましたが、同じでした。DLBである可能性が高い上、寝たきりの全介助が必要、更に胃瘻もあります。少なくともドネペジルの服用は中止すべきでしょう。

コウノメソッドではこういう症例に、グルタチオン、シチコリン、フェルガード、レミニール(あるいはリバスタッチ)と有用な治療方法が示されているのですが、当該施設にはそういう選択肢はありません。「医療連携」の名の下に、何の疑問を持つこともなく、介護負担だけを請け負ってしまったことは残念です。

2014年、DLBへのドネペジル適用が認可されました。ここで示したような医療過誤と言っても過言ではない事例は増えてくるだろうと危惧されていました。