2016/04/26

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(2)




「医療関係者が経過と症候学的特徴を正しく認識しなおす」
これが先ず第一でしょう。家族がCBSPSPSを知っていることなどないでしょう。これは介護従事者も同様です。残念ながら、ただ素人として、「この人はCBSだ。あの人はPSPSだ」と確信をもって分かるのは、典型症状が揃ってきて介護負担が増すか、寝たきりとなってからのことです。

それともうひとつ重要なポイント:医者の診断を信じないこと。自分で確証を掴むまで様子を観察して、体に触れてみること。(多忙な医師には真似できない程の時間を費やしているのは介護者なのです。)
介護のあらゆる場面で体に触れて様子を観ているからなのです。時には横から声をかけたり、顔の前で自分の手を左右に移動させたり、上下に移動させたりして、眼球の動作を観察するのです。眼球が横方向にはいくらか動くのですが、上下方向には動かないことが分かります。
また、指やボールペンを口の前に持っていくと、吸おうとする口の動きを見ることがあります。こうして、CBSPSPSの症状の有無を確認して鑑別の「根拠」となるを収集するのです。


「患者家族の観察記録と経過観察を重要な情報として参照する」
現在に至るずっと以前はどうであったのか? 患者本人から聞き出すことは不可能ですし、家族から聞き出すこともできません(何故なら、面会に来ることがほとんどないから)。そこで、「情報提供書」から生活歴(あるいは治療歴)を調べてみます。

すると、寝たきりになるずっと以前、まだADLがしっかりしていた頃にピック症状をうかがわせる記述を見つけることがあります。また、どこかの精神科病院で遅発性統合失調症と診断されていた事例もあります。

「医療関係者が経過と症候学的特徴を正しく認識しなおす」ことによって、「患者家族の観察記録と経過観察を重要な情報として参照する」ことが極めて重要であると思います。ある神経内科専門医の経験で、大学病院で画像検査などが行われたものの的確な診断がつかず、不適切な投薬によって症状が一層悪化してしまっただけという事例もあるそうです。


「レビー関連疾患に比べて進行が速く機能予後が悪い」
お世話している立場からみて、「気の毒」のひとことに尽きます。CBSPSPSの患者(施設入所者)を最期までお世話させていただいた事例は1例もありません。何かの内科疾患で入院したのに、経管栄養となって、もう会えなくなってしまった、という事例ばかりなのです。
嚥下機能が極めて悪いことから、入院した病院で胃瘻を勧められるのでしょう。こうなると、胃瘻対応の人員不足から施設ではお世話できないのです。

「介護従事者だから知っておきたいCBSPSPSと題して掲載したこのシリーズの狙いはここにあるのです。CBSPSPSと気付いたら、可能な限りの手を打たない限り、もうお世話させていただく時間は残り少ないということです。
「この人、レビー?」と思っていたら、次第にピック症状が出てきて、それでも腑に落ちない。よくよく観察してみると、どうもヘンだ。
介助する際に体幹が後ろに反り返るようなことがある。頸部後屈も出てきた。

 こうなると、PSPSを視野に入れてみる必要があります。
 
次回に続く・・・ 

2016/04/10

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(1)

「この人、腕が鉛みたいに固くて服の着脱が難しいね」、「この人、いつまでも噛み続けて飲み込むのに時間がかかるね」 こういうことは介護現場で日常茶飯のこととして遭遇することです。これらの症状から、認知症で思い浮かぶのがレビー小体型認知症(DLB)です。

ところが、この理解だけでは到底説明できない症候群があります。それが、CBSPSPSです。介護現場感覚としての頻度としては5%くらいかなというイメージですです。一般には、「1万人に数人」と推計されていますが、現実にはもっと頻度の多い疾患です。だから、認知症全般を理解する上で、CBSPSPSは必須であろうと思われます。



第2回認知症治療研究会(2016313日、パシフィコ横浜)で、教育講演のひとつとしてCBS(大脳皮質基底核変性症候群)PSPS(進行性核上性麻痺症候群) ―ピック複合関連疾患の神経症候学的検討―」が、中坂先生(新横浜フォレストクリニック院長、神経内科医)により発表されました。

介護関係者も多数参加され、この発表を聴いていたのですが、「自分の間近に存在する疾患」として理解するには更に説明を加えることも必要と思いました。そこで今回、中坂先生の許可をいただき、介護現場の視点から解説させていただくことにしました。



神経変性性の認知症の典型例として、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD、ピック病)を仮に知っているとしても、それだけでは説明のつかないことがあります。
DLBやFTDについては、概ね下図のように「第一印象での特徴」から鑑別して理解することができます。「第一印象での特徴」を掴むというのは、ある意味、日々の介護業務を通じて体得する「勘」です。そして、その第一印象から仮鑑別した病型を支持する症状を拾い集めることで裏付けデータを得るのです。

実は、介護者・介護職は、看護師以上に、医者以上に患者の体に触れていて、それだけに認知症のタイプや症状の進行に気付きやすい機会を持っているのです。

認知症として頻度が少ないとされる、PSP(進行性核上性麻痺)とCBD(大脳皮質基底核変性症)があるのですが、平均寿命に比べて「若い!」ということも手がかりとなります。私がお世話させている人で一番若いひとは69歳です。

この人は寝たきりで、無動、無言であり、入浴と食事のために離床するだけで、他者に迷惑をかけるようなことはありません。鉛管様筋固宿、左右差、びっくりまなこ、顔のシワが少なく艶やかな感じです。食事介助をすると、口をすぼめる、お茶を噛む、飲み込むのに時間がかかる、咽せるという症状を見せます。また、大きく目を開けていて、左右横方向には眼球が動くのですが、上下には動きません。




CBSPSPS。共に「仮診断」ながらも、そのように診断されている症例に出会ったことはこれまでに2例(デイサービス利用者、有料老人ホーム入居者)しかありません。
医療機関での臨床経験や認識が乏しいということが一番良くないことですが、その結果どうなるのかという実例を示します。

【実例】
PSPSと推定している入居者がいよいよ経口摂取が難しくなっており、栄養課職員と介護責任者がペースト食についてどうしようかと話しをしていました。 
食事の形態以前に治療についてどうするかが先でしょう! かなり進行してしまったPSPSなのですが、未治療で野放し。いくら食べさせようと頑張っても無駄なことであり、「理にかなった」ことは何ひとつないのです。このままでは経管栄養となり、経口摂取は不可能となります。

このままでは胃瘻造設となり施設退去は目に見えていますから、看護師に治療可能な開業医まで紹介して話しをしたのですが、「私、精神科系は解らないから」と言って逃げていきました。
褥創対応と摘便にしか注力しない人達のお粗末な対応が、結局のところ無駄な介護負担を生み出しているのです。


次回に続く・・・