2016/05/27

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(5)

高齢者の増加に伴い、CBSPSPSはかつてないほど急増している。だから、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)に続く「第4の認知症」がCBSPSPSである、と中坂医師は外来診療で実感しておられます。
CBSPSPSは、1万人に数人というような頻度ではないと、介護現場でさえも感じるのが現実です。
何故、調査研究と外来や介護現場での現実が乖離しているのか? それは、CBSPSPSの認知度が低いからなのでしょう。

臨床では動作歩行障害を主症状とすることから、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)と誤認されやすいと中坂医師は指摘しています。介護現場では、やはりDLBかと思ってお世話していたけれど、毎日身体介助をするうちにDLBでは説明しきれない症状に気付くこともあります。

また、初めは無動・無言で身体が硬いことから脳卒中後遺症で寝たきりかと思っていたけれど、お世話していくうちにCBSPSPSであることに気付くこともあります。医者からDLBとかPDとの診断されていても、介護者は「CBSPSPSではなかろうか」と疑ってみる(医者の言うことを鵜呑みにしない)ことも必要なのです。何故なら、患者の身体に一番触れているのは介護者なのです。


大病院の外来では画像検査で診断されてしまい、身体の診察が十分にされず、抗認知症薬やパーキンソン治療薬を投与されて悪化しやすいことも指摘されています。



CBSでもPSPSでも、典型症状が出揃うとは限らず、また症状は多彩です。昔あったアナログ式レコードプレイヤーで繊細な針がレコード盤の溝をトレースするのと同じように、身体に触れ、生活歴を丹念に訊いて拾い集め、鑑別することが重要です。

症状が進んで寝たきりとなった現在の姿からCBSPSPSだと鑑別し、過去にどのような生活歴(治療歴)があるのか遡って調べてみると、このシリーズ第4回・第5回に掲載したスライドに合致する症状が多々あることに気付きました。

















このシリーズ「介護従事者だから知っておきたいCBSPSPS」第4回・第5回に掲載した薄青色枠のスライドは、中坂先生が作成したスライドを元に体裁を編集して掲載させていただきました。原著スライドファイルの提供に深謝致します。


【参考資料】
ドクターコウノの認知症ブログ PSP掲載集約(H26.7-12

進行性核上性麻痺(PSP)診療とケアマニュアル


2016/05/22

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(4)

どのタイプの認知症に該当するのか? その鑑別方法の基本は第一印象を重視することだと思います。第一印象とは、患者(施設利用者)を初めて見たとき直感で掴むキャラクターのことです。ただ漠然と認知症を見ていても、あるいは「認知症=記憶機能の障害」、「認知症=徘徊」、そして「認知症=アルツハイマー型認知症(ATD)」という認識では何の役にも立ちません。

頻度としては少ないとされているCBSPSPSについては、それぞれガイドラインや資料がインターネットで検索すれば容易に入手できます。これらは、前頭側頭葉変性症(FTLD)の症候も有する神経変性の疾患なのですから、知っておきたいものです。




現在のところ、根本的な治療方法はないのですが、いくらかでも患者自身と介護者のQOL維持・向上に寄与する可能性が望めるのなら試みたい。

「コウノメソッド流 臨床認知症学」(日本医事新報社)では、治療方法について詳しく述べられているので参照いただきたい。




























【参考資料】

2016/05/05

介護従事者だから知っておきたいCBSとPSPS(3)

近年、レビー小体型認知症(DLB)が増えていると言われています。理由は色々あるのでしょうが、製薬会社がドネペジルをDLBも適用範囲となるよう申請して認可されたからという事情もあります。

DLBが増えている」という統計データ(?)の裏で、PSPSCBSが見逃されてしまっているのではないだろうか? これが気になるところです。


DLBがクローズアップされる程、神経変性性の「四大認知症」にPSPSCBSが入ってきます。ここで、左図では脳血管性認知症(VD)は「神経変性性の認知症」ではないので挙げていません。基本的に血管性認知症は、血管障害(脳梗塞、脳出血)が再発しないようにコントロールされていれば、進行しないです。

ただこれらの認知症は単独ではなく複合していることもあり、境界領域が曖昧なこともあるのです。
だからこそ、基本となる単一の認知症の特徴をよく理解しておくことの重要性に変わりはありません。

余談ですが、何故、SD-NFTADGも挙げているのか? 90歳後半から100歳を超えてなお元気があって、生活の一部をお世話するだけで暮らせる超高齢者も居るのです。ちょっとボケてはいるものの治療を受けさせたいという気にもならない、礼節が保たれ迷惑をかけることもない、そういう人たちはSD-NFT、またはADGかもしれないという認識は少数といえ必要です。

神経変性性の認知症として、以下の4つ。プラス2つを知っていれば、介護現場で遭遇する認知症患者である施設利用者の大半を理解することができます。
 ・アルツハイマー型認知症(ATD)
 ・レビー小体型認知症(DLB)
 ・前頭側頭型認知症(FTD)
・大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺 (PSP)

 ・神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)
 ・嗜銀顆粒性認知症(AGD)




一般には、認知症に占めるATDの割合が50%DLB20%、・・・と統計データが円グラフで示されるのですが、これとは別に、スペクトラムとして各タイプの認知症の関連を覚えておくことも必要です。図ではFTDDLBLPC(Lewy-Pick Complex)を青色系で示しています。橙色系がPSPSCBSを示しており、各々が重なり合っています。これは、症状が似通っていることを意味します。




「歳だから」とか「症状が悪化したから」という言い方は事実ではありますが、それは必ずしも適切とは言えないこともあります。初めはFTDであると鑑別していたのだけれど、時間経過と共にPSPSらしさがでてきて、FTDからPSPSあるいはCBSに診断を変えるということもあるのです。但し、抗認知症薬を投与した、或いは増量したことで症状が悪化するということもあります。







【事例】
ショートステイ利用のOさん(男性、70歳後半)
どこか入所受け入れ先を待っての長期滞在。時々、周囲の刺激(音、他の利用者の様子など)に怒って文句・屁理屈を言う。日常的にイライラしているようにも見えますが、FTDの「易怒性」では説明しきれないです。
食事は一番先に配膳しないと、待ちきれずに怒り出すことがあり、早食いします。目は大きく開いていて「びっくり眼(まなこ)」と思わせるものの奇異な感じでもないです。(「ピック感」はないです)

歩行器を使って歩きますが、その動作は不安定。足が出にくいとか、「すくみ足」ということはまいですが、とてもゆっくりとした動作です。著明なパーキンソニズムはないです。いつもじっとしていて、自ら動き出すことはありません。時々、ウトウトしています。

「何だろうね・・・?」という印象でお世話していたのですが、ショートステイ利用開始時に交付された情報提供書に、「統合失調症」・「パーキンソン症候群」と記されていました。それでピンときたので、Oさんの手を取り、握手してもらいました。明らかに握力に左右差があります。Oさんは、「力が入らない」と言います。

たぶん、日々の生活状況から推して、CBSの初期段階なのかもしれません。「医者の診断を鵜呑みにするな!」 これが認知症介護の基本姿勢なのですが、どうも神経内科系領域は○○科医には診られないらしい。


まだまだ続く・・・